日本人でも、英文に慣れている人の多くは、英語が母国語の人と同じように英文を前から順番に読んでいきます。つまり、一々返り読みをするのではなく、単語の一定のまとまりごとに内容を理解して、次に読み進めていくという方法で読んでいきます。短い文章ならいざ知らず、長い文章を返り読みして日本語に訳しながら読んでいくということになると時間がかかってしようがないので、長い文章は、忍耐力のある人を除き現実的に返り読みできません。そこそこの長さを持つ洋書を読もうという人は、前から順に読んでいかなければ結局読み終えることができないということになるのです(多くの場合、逐一日本語に訳すというようなこともしないで、頭の中でイメージに変換しながら読みます)。

 ではそういう人々はどうやってその方法を習得したのかという疑問が出てきますが、答えを言ってしまうと、自然にできるようになった、というのが正しいところではないかと思うのです。

 要するに、英文を大量に読んでいると、こういう読み方が自然に身に付くのです。おそらくこういう人々は、多くが大学受験の勉強のときに英文を沢山読み、それが英文を読む上でのベースになったんではないかと思います。それを考えると大学受験も決してバカにできないと言えます。

 どんなことでも一流になるためには1万時間の練習が必要だという言説がありますが、具体的にどのくらいの時間が必要かはわからないにしても、ひたすら続けなければどんなことでも上達しません。私に言わせれば、ひたすら続けられるかどうかが、才能のあるなしということになる、つまり「ひたすら続けられる人が才能のある人」という図式が成り立つことになります。

 英文について言えば、確かに大量の長文を読み続けていれば、特段才能がなくても、だんだん自然に前から読めるようになるのですが、練習を継続するのはそれなりに困難を伴います。ですが、それを手っ取り早く身に付ける方法……と言えば少し言いすぎですが、身に付けるための助けになる方法であれば、存在します。それがいわゆる「スラッシュリーディング」と言われている方法です。

 「スラッシュリーディング」の具体的な手順は、英文を意味のまとまりごとに区切って、その間に線(スラッシュ)を入れた上で、部分ごとに意味を把握していくというものです。

 たとえば、次の①のような文章(実用英語検定2級2005年長文問題より)をこの方法で読むときは、まず②次のように区切ります。

Until recently, most farmers relied on chemical sprays to control insects that harm their crops.

Until recently, | most farmers relied | on chemical sprays | to control insects | that harm their crops.

その上で、

最近まで、 | 多くの農家は依存していた、 | 薬剤散布に、 | 昆虫を制御するために、 | その昆虫とは彼らの作物を害する昆虫なんだが。

のように理解していくというわけです。

スラッシュリーディング

 ただ実際には、文の区切りに必ずしも区切り線(スラッシュ)を入れる必要もないし、実際に英文を読みながらスラッシュを入れて読むということは、初学者の頃を除けば、ほとんどの場合必要ない上、慣れてくればいちいちスラッシュを入れたりもしません。したがって、これを「スラッシュリーディング」と呼ぶのは少し違和感を感じるところです。私自身は、40年ほど前、こういう読み方が提唱され始めた頃に「同時通訳(SIM)方式」として学習したんで、「SIM方式」という名前の方が親しみがありますし、こちらの呼び方の方が正鵠を射ていると思います。私にしてみれば、教育の世界から遠ざかっている間に「スラッシュリーディング」という言葉だけが蔓延していたという状況で、せめてもう少し内実を反映した「ブロックリーディング」ぐらいの呼び方にしたらどうだと思うのです(というわけで今後私個人としては「ブロックリーディング」という言葉を使います)。

 ブロックリーディング的な読み方の実際は、次のような感じになります。文章を読むときの、頭の中でのイメージと考えてください。

Until recently, 最近まで、most farmers relied 多くの農家は依存していた、on chemical sprays 薬剤散布に、to control insects 昆虫を制御するために、that harm their crops. その昆虫とは彼らの作物を害する昆虫なんだが。

 この方法に慣れてくると、意味のブロックをもう少し長めにとって読むことができるようになります。

Until recently, 最近まで、most farmers relied on chemical sprays 多くの農家は薬剤散布に依存していた、to control insects that harm their crops. 彼らの作物を害する昆虫を制御するために、

 これでわかるように、区切りは絶対的なものではなく、ブロックの長さも人それぞれで異なるということになります。慣れてくると、一般的にブロックを長めに取るようになります。

 ブロックリーディングで読むときは、ブロックの意味を頭の中でしっかり把握した上で、次のブロックに進むということが大切です。そのため、当初は逐一日本語に変換した(訳した)上で理解していくという手順をとらざるを得ません。慣れてくると、いちいち日本語にしなくても理解できるようになります。ただしこれも程度問題で、複雑な内容を持つ文章であれば、やはり日本語に直さなければ内容が理解できないということも往々にしてあります。また、複雑な文章の場合、何度も返り読みすることもあります。これは日本語の文章を読む場合も同じでしょう。

 もう一つ重要になるのが、練習するときは必ず口に出して読む、つまり音読するということです。実はこのブロックリーディング(SIM方式)の最大のポイントは「音読にある」と言っても過言ではないほどです。音読さえ繰り返せば、多くの人が(ブロックリーディングにこだわらずとも)読解力を磨くことができるとも考えられますが、音読を繰り返すのは、実際のところ退屈な作業になりがちです。ですが、このブロック単位で理解していく方法を習得すれば、音読練習を継続するのもそれほど苦ではなくなります(と思う)。つまり退屈で苦痛な音読練習を、知的なアプローチを通じて、比較的楽で楽しめる作業に変えるというのが「ブロックリーディング」であるということを、私は声を大にして言いたいわけです。

 こういう方法を通じて、英文を前から順に読む習慣が身に付けば、文章を読むこと自体が面白くなって、知識や教養が増すと同時に、英語の構造自体も自然に理解できるようになります。こうして、右肩上がりに読解力が向上していくという好循環が生み出されることになるのです。

 こういう内容の練習を、「高校英語長文読解ゼミ」で行います。興味をお持ちになった方は、是非お問い合わせください。

- 逍遊ゼミの講座 -
高校英語長文読解ゼミ(初級)
- 逍遊ゼミの講座 -
高校英語長文読解ゼミ(中級)
- 逍遊ゼミの講座 -
小学生のための中学英語入門ゼミ