筒井康隆讀本

内田春菊、相原コージ、南伸坊、蛭子能収、吾妻ひでお、まつざきあけみき他著
実業之日本社

エログロナンセンスで終始

 筒井康隆原作の短編小説をマンガ化した作品を集めたコンピレーション本。

 原作は適宜変更されているらしく、中には「原型の想像がつかないもの」、「原作を解体・再構成したもの」、「原作のキャラクターを使った4コマまんが」なども含まれているらしい。こうなると「原作が筒井康隆作品」と言えるのかどうかすらわからなくなるが、そういう切り口なんだから文句を言う筋合いはない。

 ただここに収録されている多くの作品は、ほとんどがエログロナンセンスに終始したストーリーで、率直に言うと全然面白みが感じられない。せめて原作に忠実とかいうんだったら筒井康隆の責任に転嫁もできるわけだが、自由にアレンジが許されているというんだから、結局のところ執筆者、つまりそれぞれのマンガ家の趣味ということになるわけだ(決して良い趣味とは言えないが)。

 僕としては谷崎潤一郎のマンガコンピレーション、『谷崎万華鏡』みたいな高いレベルのものを期待していたんだが、この本については、それぞれの作に統一性がなく、やっつけ仕事のようないい加減な作りに感じられる。そういう点でまったくの期待外れだった。出版関係者には、本作りに当たってもう少し高い志を持って臨んでいただきたいと感じる。

-マンガ-
本の紹介『谷崎万華鏡』
-文学-
本の紹介『台所太平記』