ニーベルングの指環 (2) ワルキューレ

松本零士著
小学館クリエイティブ

著者笛吹けど我踊ら(れ)ず

 松本零士版『ニーベルングの指環』の第2弾で、ワグナーの楽劇『ニーベルングの指環』第2部の『ワルキューレ』が原作である。

 当然、『ラインの黄金』に続く話だが、途中で時間軸を超越したりするので、話が矛盾だらけになってまとまりがなくなってしまっている。一応オリジナルの『ワルキューレ』に沿ったストーリーということになっているが、『ワルキューレ』の形跡はほとんどなくなっていると言っても過言ではない。

 例によって、キャプテンハーロック、メーテル、大山トチローは出てくるが、今回はさらにクイーン・エメラルダスまで登場。しかもハーロック、トチロー、エメラルダス全員が子どもということで、本当に何だかよくわからない。この数十年後、ハーロックとトチローが、神として君臨するヴォータンの国を滅ぼすという設定になっているが、神の国の登場人物たち(オリジナルの『ニーベルングの指環』に由来する)が時空を超えているという設定になっているため、ストーリーが混乱してとっちらかっている。また松本零士オリジナルの登場人物も過剰に投入しすぎていることから、こちらも収拾がつかなくなっているという印象である。

 さらに、やたら「男」だの「夢」だのを強調するセリフも気になる。松本零士作品は昔からそういう傾向があるのは重々承知しているが、そういうことをしきりに繰り返されると、今では鼻白む自分がいる。こういった松本色、あるいは松本零士オリジナルのキャラクターは出さないで良いから、なるべく原作通りにマンガで再現してほしかったというのが僕の希望で、こういう形で翻案されてしまい、しかもそれがあまりうまく行っていないとなると、本当についていけないと感じる。その上、オリジナルのストーリーも適当に変えられていて、そういう点でもストレスが溜まるし、この作品、少なくとも僕のような動機で読む者には、結局のところあまり合っていないということになるのだろう。

-マンガ-
本の紹介『ニーベルングの指環 (1) ラインの黄金』New!!