ニッポンの旅
江戸達人と歩く東海道
石川英輔著
淡交社
江戸の旅を通じて江戸社会を覗き見る

講談社から出ている『大江戸シリーズ』の石川英輔の著書。講談社の本ではないので、『大江戸シリーズ』ではない。内容は江戸時代の旅についてで、江戸の旅については、これまで『大江戸シリーズ』でも何度も触れられている(本の紹介『石川英輔の本、5冊』参照)。『雑学「大江戸庶民事情」』で詳細に触れられているし、『大江戸泉光院旅日記』でも、江戸時代の旅を甦らせるような試みが行われている。本書も上記の2冊と同じような狙いで、江戸時代の旅について解説しながら、東海道五十三次の旅を疑似的に再現してみようという試みで、この本も「過去の著作の焼き直し」みたいな内容であった。ただしこれも他の石川英輔の著作と共通するが、内容は非常に含蓄に富んでいて面白い。
江戸時代の人々は、とにかく旅好きで、それは当時の街道や宿泊施設にも反映されており、旅のためのインフラが随分整っていたらしい。文政十三年の伊勢神宮遷宮の際は、日本全国から500万人が伊勢神宮を訪れたという(当時の総人口が3,100万人だったため国民の6人に1人が伊勢に行った計算になる)。関所なんかもわりに良い加減でフリーパスに近かったというし(例外もある)、治安も非常に良かったという。あげくに子どもたちだけのグループとか無銭旅行者までいたらしいが、それがまた、実際に伊勢参詣までできていた(街道沿いの人々の支援もあったらしい)というからすごい。装いや持ち物、駕籠や馬などの交通機関、貨幣などについても詳細な解説があり、「疑似旅行」をする上で十分な知識が得られる。
こういう本を読むと、江戸への憧憬がいやが上にも増してくるんだが、今の感覚からいくと、つくづく不可思議な世界であると思う、江戸時代の社会というのは。
本の紹介 – 石川英輔の本、5冊
2021年11月2日
本の紹介『大江戸泉光院旅日記』
2023年1月31日
本の紹介『雑学「大江戸庶民事情」』
2023年5月16日
本の紹介『大江戸えねるぎー事情』
2021年12月29日
本の紹介『大江戸テクノロジー事情』
2021年12月30日
本の紹介『大江戸リサイクル事情』
2022年1月4日
本の紹介『大江戸ボランティア事情』
2022年12月13日
本の紹介『江戸空間』
2023年6月27日
本の紹介『大江戸えころじー事情』
2022年10月13日
本の紹介『実見 江戸の暮らし』
2021年11月3日
本の紹介『大江戸生活体験事情』
2023年9月14日
本の紹介『三河吉田藩・お国入り道中記』
2021年11月4日













