末期ガンでも元気です
38歳エロ漫画家、大腸ガンになる
ひるなま著
POLARIS COMICS
「他人事のような明るさ」で描かれる
末期ガン闘病記

自称「エロ漫画家(女・38歳)」の著者が、腹部に異常を感じ医療機関で受診したところ、進行中の大腸ガンが見つかり(2019年)、治療を受けて現在(2020年)に至るまでを時系列で描いたマンガ。元々はWEBコミック「COMICポラリス」に2020年7月から半年間連載していた作品である。
近年しばしば目にするガン体験記の一種だが、本書は、絵がきわめてユニークな点で目を引く。表紙を見るとわかるように、主人公は『鳥獣人物戯画』に出てくる兎の姿で描かれ、主人公が頼りにする義姉も同じく『鳥獣人物戯画』に出てくる旅支度の兎の姿で描かれる。ガンの診断ができなかった「やぶ医者」は『鳥獣人物戯画』のとぼけた蛙の姿であるが、他の医師はリアルな姿で(かなり美化されて)現れる。夫については、覆面レスラーの姿でちょくちょく登場する(プロレス好きらしい)。絵はよく描き込まれており、水準が高い。僕が今回この本を読んだのも作画に惹かれてである。
ある程度時間が経った時点で過去を振り返りながら描かれたものだと思われるが、内容は迫真的で、一気に読ませる面白さがある。また、著者には、ガンだけでなく、自分の実親との確執もあり(父親に壮絶な暴力を受けていたらしい)、そのあたりの扱い(病院への来訪の拒否など)もかなり目新しい情報である。

タイトルは「末期ガンでも元気です」であるが、本書発表から約2年後の2022年12月に著者は逝去する。マンガでは、内容が深刻であるにもかかわらず他人事のように明るく描かれていたため、著者が亡くなったという事実が意外な感じもするが、腸閉塞を起こしかけるぐらい大腸ガンが進行していたことから考えると、ある意味想定内ということになるのか。しかしこれだけの作品を残せる人が、B級マンガばかり描いていたというのも大変もったいない話で、残念ながら本作が代表作ということになってしまった。マンガならではの「他人事のような明るさ」で表現された本書は、ガン診断を受けた人だけでなく、これからガン診断を受ける可能性のある多くの人にとって意義のある著作になっている。






