喋々喃々
小川糸著
ポプラ社
フィクションのあり方についてあらためて考える

恋愛小説です。
主人公は栞(しおり)という30前後(だと思う、要確認)の女性で、しかも相当な美人のようです。小さな中古着物屋さんを経営しています。その店にたまたまやって来た木ノ下春一郎という既婚の男と恋仲になって、楽しくやって、別れを決意するという話。メインのストーリーはこれだけですが、これが383ページに渡って展開されます。
とにかく、ストーリーとあまり関係ない場面で、どこそこの店でどういう料理が出ておいしかったとか、どういう料理を作ったとか、あるいはどこに行ったとか、どんな服が素敵だとか、そういった、雑誌「Hanako」に出てくるような情報が、頻繁に出てくるわけです。しかも微に入り細をうがち紹介される。まさに「紹介」です。そういえば主人公の妹は「花子」という名前です。巻末を見ると、「asta*」という雑誌の連載小説だったということで、はあなるほどねという感じはあります。
相手の男も、優しくて気が利いて、なんだかとても魅力的なんだそうですが、性格がよく伝わってこず、作り物みたいです。こんな人間いるんかいなと思ってしまうほどです。主人公の方も、優しくて美しくておだやかで有能で、着物の着こなしがうまくてと、これまた言うことなし。いや、いいんですけどね。でも、著者にも愛読者にも「本当にこういう小説で満足なのですか」と問いたい気がします。
最初に恋心を相手に明かす場面や、最初に2人で泊まる場面、別れの場面は、情景が細かく描かれていて、なかなかスリリングなのですが、その他は、日記みたいにだらだらと展開されます。ブログみたいです。端的に言って、これはフィクションの日記だと思います。
全体に、若い女性が理想とするものを盛り込みましたという感じがひしひしと伝わってきます。ハーレクインかコバルトかっちゅう感じですかね。
小説については好みの問題が大きいので、あまり批判しようとは思いません。で、今まで書いてきたことも決して批判や悪口ではないつもりなのですが、ただ「みなさん、本当にこういうので良いのですか」という気分は今でも続いています。

