カルト村の子守唄

高田かや著
文藝春秋

「村」は本当に「ムラ社会」だった

 これまで「カルト村」(おそらくヤマギシ会)の内情を暴露してきた高田かやによる、「カルト村」マンガの最終編。これまで、初等部(『カルト村で生まれました。』)、中等部、高等部(『さよなら、カルト村』)、一般社会に出てから(『お金さま、いらっしゃい!』)の事情が描かれてきたが、本書は、これまで描かれていなかったそれ以前の幼年部のあたりが中心になる。また、生まれる前に両親がいかにして「村」に入ってきて、著者が生まれることになったかも後半で描かれる。これで、著者の「カルト村」生活のすべてが披露されることになった。

 本書で扱われる幼年部のあたりはさして目新しさもなく面白味もなかったが、教職を目指していた普通の大学生が、コミューンの村の生活に関心を持ち、村に入ってきたあたり(つまり両親の話)が特に興味を惹かれる。しかも村の中でマドンナ的な存在だった母に比べて、仕事ができないダメ人間みたいな扱いを受けていた父が周囲の反対を押し切って結婚するくだりはなかなか真に迫っていて面白い。何より、すべての人のためのコミューンという建前でありながら、「仕事ができない」みたいな扱いを受けるというのがとりわけ興味深い。前半にも、一般社会から村に入ってきて、村人から疎まれる(「いじめに遭う」という感じに近い)女性が登場するが、そういうことを耳にすると、このコミューン、本当に「ムラ社会」で、日本の土着社会の縮図みたいにも思える。こんな閉じた環境に入るとろくなことがないだろうということはあらためて認識させられた。

 マンガは全体的に説明的で、絵が中心ではあるが、ト書きというか説明書きがやたらに多く、絵が挿絵レベルになってしまっているのが大変気になる。そのせいか読んでいてかなり飽きてくるので、もう少し絵中心で展開すべきだったかなと思う。内容が斬新なのでそれなりに価値のある本だが、当然ながら最初の『カルト村で生まれました。』ほどのインパクトはない。それに、やはりヤマギシ会を「カルト」と呼ぶのは(会員が内部の事情を知った上で入会する上、割合自由に退会できるという点で)いかがなものかとも思う。

-マンガ-
本の紹介『カルト村で生まれました。』
-マンガ-
本の紹介『さよなら、カルト村』
-マンガ-
本の紹介『お金さま、いらっしゃい!』New!!
-マンガ-
本の紹介『カルト宗教信じてました。』
-マンガ-
本の紹介『カルト宗教やめました。』
-マンガ-
本の紹介『よく宗教勧誘に来る人の家に生まれた子の話』
-社会-
本の紹介『「カルト宗教」取材したらこうだった』