以前、昨今の英語教科書のひどさについて書いたが(『間違いだらけの教科書選び』)、今年また教科書が改定されたため、再びここで、中学英語教科書問題について触れておこうと思う。

学校教科書は数年ごとに改定され、場合によっては学習指導要領の変更と同じタイミングになったりするため、あるいは大幅な変更になったりすることもある。今年はそれほど大きな変更はなかったが、岡山の多くの中学校が採用している三省堂の「ニュークラウン(New Crown English Series)」は、全面的に刷新されていた。全編カラーで、相変わらずかわいいイラストが多用されていて、親しみを持たせるたたずまいではあるが、内容については、今回もまた疑問符がつく。
今回チェックしたのは3年生の教科書であるため、3年生の教科書について触れるが、何より読み物の部分が大幅に減っていることがわかる。前回までの教科書では、単元ごとに読み物が掲載されていたが、今回の教科書には、単元の最後に読み物らしきものはほぼない(Lesson6とLesson7には「Goal Activity」という名の読み物がある)。読み物と言えるものはReading Lessonという単元にまとめられているが、これが全部で3本しかなく、思わずこれで事足りるのかと感じてしまう(こういう単元は学校では往々にして省略されがちであるし)。内容も少し首をかしげたくなるようなものが多く、今回も「ニュークラウン」はデキが悪いと断言できる。

今回は開隆堂の「サンシャイン(Sunshine English Course)」についても買って読んでみたが、こちらは「ニュークラウン」よりはるかに内容が充実しており、読み物もずっと多い。しかも取り上げられているトピックが、睡眠の大切さ、チョコレートの苦い現実、海洋ゴミ問題など非常に多岐に渡っており、内容も深く興味深い。使われている単語も「ニュークラウン」ほど突飛なものがないという印象で、文章も読みやすい。以前、『間違いだらけの教科書選び』のところで「ニューホライズンやサンシャインについてはよくわからないが、似たり寄ったりではないかと推測される」と書いたが、実態は違っていたわけである。確かめもしないで書いた非礼をここでお詫びして訂正したい。「サンシャイン」は非常に優れた教科書という印象で、僕が中学の英語教師なら(でなおかつ決定権があるなら)ぜひこちらを採用したいと感じる。
そういうわけで、今回、それぞれの教科書から読み物をピックアップして対訳を紹介したいと思う(対訳については別項で紹介します)。中学校の関係者以外の方々にも、その内容について吟味していただきたいと感じてのことである。「ニュークラウン」が「Reading Lesson 1 What Makes Music?」(p.38)で「サンシャイン」が「Further Reading 3 Nakamura Tetsu」(p.121)である。「ニュークラウン」の方は、内容についてもツッコミどころが多かった。Who Wrote This!?(誰がこれを書いたんだ!)と叫びたくなるような内容である。こんな教科書を使って英語を教える苦痛を察していただきたいものである。三省堂には、もう少し精進して、真摯な良い教科書作りに励んでもらいたいと心底思う。