今回の対訳は、悪い文章の例として取り上げています。学習素材としては不適切という判断をしています。
素材は三省堂の中3向け英語教科書『ニュークラウン3(New Crown English Series 3)』に収録されている「Reading Lesson 1」です。
対訳を付けていますが、原文があまり良い文章ではないため、読みやすくするためにかなり意訳しています。
学校でこの教科書を使っている中学生の皆さんは教科書ガイドとして利用してください。
(はじめに)この文章に接して感じた印象

音楽の三要素といえば、一般的にリズム、メロディ、ハーモニーとされるにもかかわらず、この文章ではなぜか、リズム、メロディ、楽器に焦点を当てている(それならばそれでも良いが)。しかもここで取り上げている楽器がなんとコンピュータと来ていて、おかげで文章の主題がわかりづらく、一貫性のない文章になっている。しかも内容が浅薄で、救いようがないとさえ感じる。
「リズム」でジャンベを取り上げるというのもあまり必然性がなく、ビートルズの音楽をこんなところで持ち出しているのもイケてない。それに「イエスタデイ」は短調ではなくヘ長調だし(短調に転調したりはしているが)、曲自体にはそれほど悲しい雰囲気はない。悲しいメロディの代表として取り上げるんだったら「Because」とか「While My Guitar Gently Weeps」とかを取り上げたら良さそうなものだが。
事実誤認の他、全体的にセンスの悪さが目立つ文章で、しかも英文としても読みづらい。使っている単語も中3レベルとしては適切でない。誰がこの文章を書いたのか知らないが、この教科書の作り手たちはこんな文章を中学生に読ませたいと思っているのだろうか。今の大学入学共通テストに通ずるような、作り手の傲慢さと見識のなさを感じるのは決して僕だけではあるまい。
Reading Lesson 1
What Makes Music?
リーディングレッスン1
何が音楽を作るのか
Music is part of our daily lives. You hear it everywhere, and it affects us in many ways. Music can express happiness, sadness, or anger. It can heal us. It can encourage us. Music has the power to move people. This power comes from the combination of rhythm, melody, and instruments.
音楽は私たちの日常生活の一部です。私たちはどこででも音楽を聴きますし、音楽はいろいろな方法で私たちに影響を与えます。音楽は、幸せ、悲しさ、怒りを表現することができます。また私たちを癒やす他、私たちに勇気を与えることもできます。音楽には人を感動させるパワーがあります。このパワーは、リズム、メロディ、楽器の組み合わせから生まれます。
RHYTHM
The rhythm of music is central to its power. Rhythm holds a piece of music together. The djembe music of West Africa illustrates this. Players beat their djembes and produce three basic sounds. They combine the sounds to create a complex rhythm. They play the rhythm again and again to make a piece of music.
Djembes are commonly played at social events like weddings and funerals. People dance and sing to the djembe's music. Rhythm brings music and people together.
リズム
音楽のリズムはそのパワーにとって主要な要素になります。リズムは、個々の音楽を一つにまとめます。西アフリカのジャンベの音楽を通じて、このことが理解できます。演奏者はジャンベを叩き、3つの基本的な音を生み出します。彼らはその音を組み合わせて、複雑なリズムを作ります。彼らは、何度も何度もそのリズムを演奏し、音楽を生み出します。
ジャンベは、結婚式や葬儀などの社会的な行事で広く演奏されます。人々は、ジャンベの音楽に合わせて踊り、そして歌います。リズムが音楽と人々を一つにするのです。
MELODY
Another powerful feature of music is melody. Key and tempo are important parts of melody. Musicians combine them to express feelings and emotions.
Let's consider music by the Beatles. "She Loves You" is in a major key and has a fast tempo, so it sounds happy. Meanwhile, "Yesterday" is in a minor key and has a slow tempo. It sounds sad. Melody shares feelings and emotions between the musicians and listeners.
メロディ
音楽のパワーを生み出すもう一つの特徴にメロディがあります。調性とテンポが、メロディの重要な部分です。音楽家はこれを組み合わせて、感情や情動を表現します。
ビートルズの音楽について考えてみましょう。「シー・ラブズ・ユー」は長調でテンポが速く、そのために明るい気持ちになります。一方「イエスタデイ」は、短調で遅いテンポになっており、悲しい気持ちになります。メロディが、音楽家と聞き手の間で感情と情動を分かち合うのです。
INSTRUMENTS
Instruments are the tools to create rhythm and melody. What comes to mind when you think of instruments? Pianos? Violins? Trumpets? Nowadays, even a computer can be an instrument.
With a computer, people can make music even if they do not know how to play anything. First, choose the key, tempo, and instrument. Then just tap on the virtual instrument to play notes. You can do this with several other instruments as well. After that, the computer puts all the notes together, and you have a new piece of music. The way of making music is changing with the evolution of technology. With this new type of instrument, everyone can create their own music.
With music, people can come together, express their feelings, and be creative. This is the power of music.
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楽器
楽器は、リズムとメロディを作り出すための道具です。楽器と言えば、何を思い浮かべるでしょうか。ピアノですか? それともヴァイオリン? トランペット? 最近では、コンピュータでさえ、楽器になり得ます。
たとえ楽器を演奏する方法を知らなくても、コンピュータを使えば音楽を作ることができます。まず最初に、調性、テンポ、楽器を選びます。その後、音符を演奏するためのバーチャル楽器をタップすると、それだけで音楽ができあがります。同じようにして、他の楽器でもこの作業を繰り返します。やがてコンピュータがすべての音符を一つにまとめ、その結果、新しい音楽作品が生み出されます。音楽を作る方法は、テクノロジーの進化にともなって、変わりつつあります。この新種の楽器を使えば、誰もが自分自身の音楽を作れるようになります。
音楽によって人々は一体となり、自分の感覚を表現し、創造的になることができます。これこそが音楽のパワーなのです。