わが子に教える作文教室

清水義範著
講談社現代新書

子どもに教えることが自身の成長になる

 『清水義範の作文教室』と同様、作家の清水義範が、子どもの作文指導の方法を紹介するという内容の著書。『作文教室』が1995年発表で、この本が2005年に出たものであり、本書は「続編」という位置付けと考えて良さそうだ。元々は『週刊現代』に連載したエッセイを一冊にまとめたものである。

 本書は、親が子どもに作文指導をするための手引きという体裁になっており、自分の子どもに作文を書かせて作文力を伸ばす「星一徹」(ご存知、『巨人の星』のキャラクター)になろうというスタンスで貫かれている。そのため、作文嫌いの自分の子どもを(巧妙に)そそのかして何とか作文を書かせるところから始まり、書いたものについては褒めそやしてどんどん書かせていくという方法論が採用される。書かれた内容に対して「こんなことをするのは間違っている」などと内容について非難することは筋違いも良いところで、文章の間違いは適宜指摘したとしても、基本的には褒めてそそのかすのが筋らしい。お説ごもっともである。

 適宜、子どもの作文が紹介されるが、前著と同じ作文もよく出てくる。したがって本書は、著者のかつての作文指導の経験がそのまま活かされたものと考えることができる。

 また前著で、子どもの作文に対して幾度か行ってきた「このときにどういうふうに思ったか書くともっと良くなる」という指摘については、本書では、あまり必要以上に行うべきものではないとして撤回している。前著の段階で、自分がどう感じたかを書かずに客観的な記述ばかりを書く子どもたちがいて、そういう子どもたちに心情を書くようアドバイスしたといういきさつがあったが、結局彼らは最後まで心情をうまく表現することができなかったという。しかし、客観的な描写、つまり観察文は非常にうまく書くわけで、そうするとそれはそれで、その子どもの個性と言うこともでき、逆に心情を書けば良い文章という著者の思い込み自身が間違っているのではないかという結論に至ったそうである。著者もそういう点で成長したんだろうが、人に教えるということは、教える側の成長にも繋がるということがよくわかるエピソードである。

 この本を読むのは今回二度目で、僕が子どもの作文に最初に関心を持つきっかけになった書である。

-国語-
本の紹介『清水義範の作文教室』
-国語-
本の紹介『大人のための文章教室』
-国語-
本の紹介『浜文子の「作文」寺子屋』
-国語-
本の紹介『文章力!』