文章力! 子どもがよろこぶ作文指導
浜文子著
小学館
無理強い教育にサヨナラ
各地で子ども向けの作文教室(「文章表現教室・寺子屋」)を開いている著者、浜文子が、作文指導の実際について語った本。前著『浜文子の「作文」寺子屋』の続編みたいな位置付けの本で、内容も重複するが、著者の作文教室と作文指導、それから子どもたちの作文の魅力が存分に伝わってくる書である。
本書では、教室で実際に子どもたちに出した課題とそれに従って書かれた作文が紹介されていくが、課題もユニークだが作文もなかなか魅力的。どういう方法論でこういった作文を引き出すのかが本書で紹介されていくわけだが、その中心となる部分は、子どもたちに対する接し方にある。子どもたちは本来自分を表現したい存在であるというのが浜先生の考え方で、そのために、作文を楽しんで書くような方向に誘導していく。先生の側も子どもたちも双方楽しんでいる様子が、文章から伝わってくる。
中には、こう書くようにと指導・誘導してはいけないとか、子どもの表現を尊重すべきとか、指導する立場の人間にとってはなかなか耳が痛い言葉が溢れているが、逆に僕などが読むと、それもこれも子ども中心の考え方というのがわかるため、そういうスタンスに心地よさを感じる。
著者は、小学校の先生が学校で書かせる作文についても批判的で、指導者(そのほとんどは先生だが)が(作文の内容や子どもたちの感じ方までも)一定の方向に誘導しようとする点で大いに問題があるとする。そういう無理強いが作文嫌いを増やすことになるというわけである。つまり、大人たちは、自覚がないまま、何かと子どもを自分の理想に近づけようとするが、それが子どもたちに逆の効果を招いているということになる。
今回、この本を読み始めてから、教室の実際の様子(どのくらいの時間やっているかとか、どういう構成になっているかとか)を知りたくなって、先に『浜文子の「作文」寺子屋』を読んでみたんだが、どちらの本を通じても実際の状況はあまり伝わってこなかった。そういう点が少しもの足りなく感じた点であるが、学校の常識に一石を投じるという点で、非常に有意義な本であることは疑いない。