七帝柔道記 (3)〜(6)
増田俊也原作、一丸作画
ビッグコミックス
翻案の鑑!

前に紹介した『マンガ版七帝柔道記』の続きで、第3巻から第6巻(最終巻)である。今回は、電子書籍を購入して読んだ。特にマンガの場合巻数が多くなり、買うとかさばるためである。ただ1巻と2巻については書籍版を購入したんで、結果的に中途半端になってしまった。電子書籍は今回iPadで読んだが、読むという作業に問題はなく、違和感も感じなかった。
内容については、前回も書いたが、原作の『七帝柔道記』を忠実にマンガ化しているという印象で、印象的なシーンも過不足なく描かれている(「竜澤」と「ゲソ」の絡みが特に良い)。そういう点でも、非常に質の高いマンガ化である。絵として描かれるため、きわめて多くてややこしかった登場人物についても、そのイメージがしっかりしたものになる。最適な素材を最適な方法(特にネームのレベルが秀逸)で翻案した作品と言える。中でも最後のシーン、病院内で、主人公が柔道部の一員としてのアイデンティティを確立するあたりが、原作同様非常に感動的に描かれている。この作品の目玉である。ただしマンガでは、(セリフとしてではなく)説明的な記述で表現されていたことから、少しばかり味気ないシーンになってしまったが、これは致し方あるまい(原作はすべて地の文であることだし)。
いずれにしても、原作→翻案の順で読んだにもかかわらず、マイナス面がほとんど認められなかったという点で、稀有な翻案作品であることには違いない。関係者に拍手を送りたい。パチパチ。