最高の死に方
近藤誠著
宝島社新書
医療による人間疎外から逃れ
人間を取り戻す

『がん放置療法のすすめ』の近藤誠の著者で、死ぬ方法について具体的に考えていこうという本。
冒頭から安楽死を取り扱うというなかなか積極的な姿勢に驚くが、日本では禁止されているはずの安楽死は、実際には「麻酔導入剤」による「鎮静」という形で行われているということで、患者や家族が希望すれば処置されることが多いという。とは言え、実際の病院現場では、手がかからない寝たきり老人や植物状態の患者は、ベッドを埋めて収益を増やすことに繋がるため、病院側としては簡単には「鎮静」させたくないらしい、著者によると。
その後、さまざまな病気について検討し、がんで死ぬのが理想的であるという結論に辿り着く。ただし外科手術や抗がん剤などは(原則的に)利用しないという条件付きである。一般的にがんによる衰弱死は、あまり苦しみも伴わず眠るように死ぬことから、かつてはそういう死が「老衰死」として扱われてきたという。がんを外科手術し抗がん剤が処方されるようになって、患者の苦しみが著しく増すようになったことから、現在ではがんは恐怖の対象になっているが、元々はそうではなかったのだというのが本書の主張である。
で、そういう流れで、最終章に、肺がんで比較的平穏に死を遂げた『大往生したけりゃ医療とかかわるな』の中村仁一との対談が出てくるのである(対談当時はもちろん存命)。対談は2021年3月の時点に行われており(その後、中村氏は2021年6月に死去)、対談時の状況としては、咳はよく出るが、普通に自宅で生活しており、食べる物も食べられているということらしい(中村氏は、食べられなくなったときこそ死を迎えるときと考えているようだ)。「いいですねえ」とか「ぼくもあやかりたいです」などという近藤の言葉も出てきて、一つの死の理想的な形として中村氏のがんが紹介される。
ただ、がんで死ぬのがいいとわかっていても、実際にはその前に脳卒中や心臓病で発作を起こすこともある。その場合もそのまま安楽に死ねれば良いが、実際は、救急車で病院に運ばれて、不必要に延命され、辛い余生を送らなければならなくなることもある(これはあくまで著者の意見)。それに備えて「リヴィングウィル」を作り、延命治療や人工呼吸器を拒否する姿勢をあらかじめ示しておくのが良いと、著者は主張する。そのための「リヴィングウィル」のテンプレートまで、付録として収録されている。
著者と中村仁一の共著、『どうせ死ぬなら「がん」がいい』で示された「年を取ったらいつまでも生に執着しないで死を覚悟して生きるべき」という考え方が本書でも示されており、同時に「死を受け入れることは、死をタブー視せず常に死を前提として生きることから、生の充実にも繋がる。」という中村仁一の思想を体現している。本書をきっかけに、理想的な死というものについて考えてみるのも良いのではないかと思う。






