コンピュータ、どうやってつくったんですか?
川添愛著
東京書籍
入門書の鑑
コンピュータの原理について平易に紹介する本。
コンピュータのしくみを紹介するために位取り記数法から説明していくという画期的なアプローチに、まず好感が持てる。その後、二進法、デジタル化(アナログ信号を標本化と量子化を通じてデジタル値に変換するということ)、論理演算とそれを実現する電気回路、CPUの構造、プログラミング言語の基礎(おそらくアセンブリ言語)まで、コンピュータの基本構造を広範に紹介する。しかも記述はすべて平易で、大変わかりやすい。今まで読んだコンピュータ関連の本の中でも、わかりやすさではダントツである。
妖精と理科系男子の対話というスタイルで話が進められ、適宜図版が現れるという割合ありがちな構成ではあるし、「妖精と理科系男子の対話」にする必然性があるのかなどとも思っていたが、それなりに面白い効果が出ていて、結果的には○である。図版についても、必要であればページを超えて同じ図版が繰り返し出てくるという念の入れようで、おかげで前後に何度もページを行ったり来たりしなくてすむようになっている。素晴らしい配慮である。
元々は著者が、津田塾大学で行った講義を元にして作った本だということだが、学生の背景が多様だった(情報科学を専門とする学生だけではなかった)ことから、大勢の人が興味を持ち続けなおかつ理解できるように工夫を重ねたということなのである。この目的はこの本の中で十分に実現されていて、すばらしい本に仕上がっていると言える。また、それぞれの項目を深く学習するための学習教材や参考文献についても詳細に紹介されていて、まさに「入門書の鑑」と言って良い。妖精界の守り神の名前がドゲンカ・センバでお告げが博多弁だったりするのも良い(ちなみに博多弁の「どげんかせんば」は「何とかしないと」と意味です)。