ゲームセンターあらしと学ぶ
プログラミング入門
まんが版 こんにちはPython
すがやみつる著
日経BP
かなりユニークなプログラミング入門書
この手の入門書をここで紹介しようという気は基本的にはないんだが、この本はある意味かなりユニークなんで、紹介することにした。
著者のすがやみつるは、『ゲームセンターあらし』などの代表作を持つマンガ家で、コンピュータ関連のマンガも描いていたらしい。僕自身は、『ゲームセンターあらし』は一切読んだことがなく、タイトルぐらいしか知らなかったんだが、ある程度名前のある本格的なマンガ家が、プログラミング言語、Pythonの入門書をマンガで描いた(つまりこの本なんだが)という事実が今回僕の目を引いたわけである。
言ってみればこの本もよくある類の学習マンガであるが、最大の違いは、全編、すがやみつるが企画し、ネームを書いて、マンガとして仕上げていることが窺われるという点である。つまり、難しい内容をわかりやすく見せかけるために、マンガ家に作画を依頼するというものではない、完全オリジナルの作品であるというところが非常にユニークなわけである。
というのもこのすがやみつる氏、マンガ家としてヒットを飛ばした後に、プログラミングの勉強をするために通信制大学に入学し、その後大学院まで通ったという人で、プログラミングについてはある意味プロと言えるし、当然マンガもプロなのである。そういう二つの技能を持った人が描いた作品であるため、大変価値が高いと言えるわけである。
さて本書だが、最初から最後までコママンガになっていて、このあたりもそこいらのマンガ風のプログラミング入門書と違うところである。そういった本は、ところどころマンガの部分があるという程度で、むしろ挿絵に近いという印象だが、本書は全編マンガなのである。登場人物は、『ゲームセンターあらし』のキャラクターの石野あらし、大文字さとる、月影一平太で、大文字さとるがプログラミングについて解説して、あらしと一平太が教わるという展開になっている。
プログラミングの基礎から説きおこし、最終的に簡単なゲームを作るという流れになり、入門書としてはそれなりの構成になっている。マンガの方は、確かに手抜きが無く、最後までマンガの形式を失わないんだが、やはりプログラミングの解説書であるため、途中からマンガの要素はあまり関係なくなり、セリフとスクリプトだけで展開されるようなコマばかりになってしまうのは致し方ないのかも知れないが、大変残念な部分である。また、こういったプログラミング入門書の「あるある」なんだが、ある箇所からいきなり難易度が上がってしまいわかりにくくなってしまうということが、本書でも出てくる。著者は、本書を入門書の入門書と位置付けて、入門書を読めるようになるためのステップとして活用してほしいという思いだったようだが、この本でもやはり難易度の跳ね上がりがあるのは、プログラミング入門書であることを考えると致し方ないのか。
とは言え、わかりにくくなってはいるが、何とかわかるレベルは保てているので、それはそれで良しとすべきかも知れない。プログラミング入門書として見ると割合良くでてきている方で、子どもでもすんなり入っていけるかも知れない。それに特に序盤は、キャラクターの特性がよく出ていてマンガとしても面白く仕上がっている。ただ後半になると、それぞれのキャラが、説明するだけの役割、説明を聞くだけの役割に堕してしまっていて、マンガとしての面白さはなくなってくる。そのあたりは残念。