決定版 マインド・コントロール
紀藤正樹著
アスコム
カルト問題入門として格好の書
統一教会やオウム真理教などの問題に取り組んできた弁護士、紀藤正樹の著書。カルト宗教団体がどのような手口で人々をだまし信者化していくか、その手法を解説していく。
著者は、マスコミにもよく登場してはいるが、長い間カルト宗教の被害者救済に地道に取り組んでいる人で、1991年には統一教会の手法の違法性を問う裁判を東京地裁にいち早く起こしている。つまりこの種の問題については実績、経験とも随一の弁護士である。そのため、マインド・コントロールの現場にもよく接している他、被害者をマインド・コントロールから救済する過程などにも実地に接しているらしく、マインド・コントロールには造詣が深い。本書でも、実例がいろいろと紹介されながらマインド・コントロールの実際が懇切丁寧に語られるため、マインド・コントロールの現実を知る上では非常に有用な本と言える。
まず第1章でマインド・コントロールの定義や方法論が語られ、これがまた非常に丁寧な語り口で、大変わかりやすい導入部分になっている。第2章では「霊感商法」での手口、第3章では「カルト」での手口が具体的に紹介され、第4章で脱マインド・コントロールの手法と続く。
本書で想定されているのは主に統一教会であり、他にオウム真理教、法の華三法行、本覚寺・明覚寺グループ、ライフダイナックス系の自己啓発セミナー、SPGF(旧ライフスペース)についても随時取り上げられている。さらにはアメリカのカルト事件についても具体的に紹介されており、マインド・コントロールに基づくカルト被害が世界中に蔓延していることがわかる。それでも特にカルトが蔓延しているのが日本であり、カルトとマインド・コントロールについて適切な方策を今すぐにでも取るべきと主張する。あわせてマインド・コントロール被害を減らすための提言も紹介されている。
マインド・コントロールに関わるあれこれを丁寧かつわかりやすい口調で、きわめて網羅的に紹介した本がこれで、カルト問題入門、マインド・コントロール問題入門としては格好の書と言えるのではないだろうか。統一教会の問題が明るみに出た今だからこそ、大勢の人に触れてもらいたい真摯で立派な本である。