わたしたちが沈黙させられるいくつかの問い

レベッカ・ソルニット著、ハーン小路恭子訳
左右社

女性性の問題は社会全体の問題である

 『説教したがる男たち』のレベッカ・ソルニットによるエッセイ。『説教したがる男たち』と似た装丁で、同じ出版社、同じ翻訳者であることを考えると、あの本の続編のような扱いの本ではないかと思う。

 全編に渡って短編のエッセイが集められているが、前半では、女性が強いられてきた「沈黙」が大きなテーマになっており、「沈黙は破られる」というタイトルでまとめられている。後半は、その他のテーマ(もちろんフェミニズム的なもの)のエッセイが6編収められ、こちらは「ブレイキング・ザ・ストーリー」というタイトルでまとめられている。

 どのエッセイもインパクトがあり、(特にアメリカ社会で)「女性」性が置かれてきた厳しい現実が浮き彫りにされている。中絶や性的暴行、脅迫や殺人など、男側の視点からはなかなか気付きにくい事象が数多く言語化されて明るみに出されており、そこで綴られる内容はきわめてショッキングである。これは同時に社会的マイノリティからの視点でもあり、本来であれば、社会のすべての構成員がそこに目を向けるべきもので、そういう意味でも目からウロコであった。一人の人間として、もう少し早く知っておかなければならなかった事項であり、いずれにしても他人事で済まされないテーマである。

 このような社会状況は永らく続いていたが、声を上げる人が出てくるにつれ少しずつその問題性が明るみになってきた。そこには著者の活動も影響を与えているのであるが、中でも2014年が一つの転換点になった。本書(「反乱の年」の項)でも指摘されているように、この年にさまざまな問題が明るみに出て、その結果、女性性に対する抑圧が広く知られるようになり、それが導火線のように波及して、新しい問題が次々に明らかになっていった。やがて#MeToo運動が米国から起こり、さらには日本でもセクシャルハラスメントの問題が取り上げられるようになって、(これまでマスコミに無視されてきた)ジャニーズ事務所の問題まで明るみに出ることになった。こういうことを考え合わせると、何も問題は女性側だけのものだけでなく、男性側の問題にも通じるものであるということがわかり、このような抑圧の問題が、マイノリティだけでなく、マジョリティの問題でもあるということが再認識されたわけである。そもそもマジョリティだって状況によってはマイノリティになるのであって、それを考えると、抑圧構造自体を排除する必要があるという結論にある。

 以上のようなことを考え合わせると、今まで(多くの人間にとって)気付かれにくかった問題を明るみに出したということに大きな価値があり、それがこの本の価値に通じるというわけである。

 脅迫や殺人の事例が頻出するため内容は非常に重いが、それが女性にとっての現実であるということがよくわかる。ものの見方が大きく変わる好著である。

-社会-
本の紹介『説教したがる男たち』
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本の紹介『私のいない部屋』
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本の紹介『「非モテ」からはじめる男性学』