世界の川を旅する

野田知佑著、藤門弘写真
世界文化社

のんびり読もうぜ

 カヌーイスト、野田知佑による「世界の川」紀行。世界の12の川を下り、そこでの思いや人との出会いを綴る。例によって藤門弘が同行して写真を撮影しており、情景をよく伝えている。本はB5版くらいの大判で、見開き2ページにドドーンと出てくる写真もあって迫力がある。

 下った12本の川は、カナダ・ユーコン川、ニュージーランド・ランギティキ川、アイルランド・シャノン川、フィジー・ナブア川、タイ・ピン川、オーストラリア・キャサリン川、モンゴル・エグ川、アラスカ・ジョン川、アイスランド・バトナ氷河、イタリア・アディジェ川、コスタリカ・サラピキ川、チリ・セラノ川。釣りをしながらのんびり下るというのが野田氏の基本スタイルであるが、中には、流れが速かったり水量が多くなっていたりしてのんびり下れない川もある。そういう川にも独自の楽しみがあるようで、世界の川がこうやって一堂に会して紹介されると、それぞれの地域の川の特徴みたいなものがよく伝わってきて大変面白い。

 著者によると、ヨーロッパの川は近代化の過程で河川改修が行われていて面白くないらしく、そのためにヨーロッパでは沿岸の人々とのふれあいが川旅の楽しみの中心になるという。また、パタゴニア(チリ)などの極寒の地では川に魚がいないなど、それぞれの地域で川の風貌が異なっているのも興味深い。モンゴルのエグ川は、NHK-BSのドキュメンタリー、『風に吹かれてカヌー旅』で下っていた川と同じ川で、あの番組はこの本のエグ川下りの続編ということになる(あのドキュメンタリーの方が走行距離もはるかに長い)。

 全体で約200ページ(そのうち半分くらいは写真)で決して密度が濃い本ではないが、ゆったり読むのに適した本である。川下りのゆったりしたペースで時間をかけて、川下りの疑似体験をしながら読むのが良いと思う。

-随筆-
本の紹介『日本の川を旅する』
-随筆-
本の紹介『ダムはいらない! 新・日本の川を旅する』New!!