ホームレス救急隊
フランス「115番通報」物語
オド・マッソ著、川野英二、川野久美子訳
花伝社
バンド・デシネの水準が見えるかな

「バンド・デシネ」はフランス製のマンガであるが、何だか知らないがすごいものみたいに一部で喧伝されており、しかもあの大友克洋まで影響を受けたとか聞くと、ちょっと見てみたいとつい思ってしまう。ただ日本ではそれほどバンド・デシネが出回っているわけではなく、出ていてもかなり高価でなかなか手にすることができない。図書館にもほとんど入っていない。ところがこの本は図書館に置かれていたのだ。内容が、フランスの路上生活者救援組織、サミュ・ソシアルの活動を扱っているからかも知れない。ドキュメントとしての価値が高そうだし。
というような背景で、この本を図書館で借りたのであった。そのため、内容云々よりバンド・デシネへの関心が高い。で、結論を言うと、マンガとしての質は、日本のものと比べてかなり低い。強いて言うなら、「挿絵が非常に多い本」というところで、優れたマンガのように絵自体がビビッドに動き出すということはない。著者は、それなりにバンド・デシネ作品を出している人であるため、バンド・デシネ自体の水準をある程度反映していると見ても良さそうで、結論としては良いものもあるかも知れないが、全般的な質としてはまだまだというところである。
内容は、先ほども言ったが、サミュ・ソシアルの活動の紹介で、前半でサミュ・ソシアルの創立者の話を聞き、後半で、実際の活動に密着するというもの。途中、著者の思索の過程も描かれるが、このあたりは完全に「挿絵」化してしまう。中盤の思索の段階は、翻訳文もわかりにくく、内容自体にも興味が湧かない。ルポとしてももう一つで、正直あまり得るところはなかった。
本書を発行している花伝社は、他にもバンド・デシネをいろいろと出しているようで、注目に値する活動ではあるが、バンド・デシネ自体は、作品にもよるんだろうが、まだまだ発展途上という印象である。あまり食指は動かない。



