清水義範の作文教室

清水義範著
ハヤカワ文庫JA

東京先生の添削日記

 作家の清水義範が、子どもの作文教室に関わり、彼らの作文に接したときの顛末を書いた著書。

 著者の弟が名古屋で学習塾をやっており、その塾に作文教室の授業がある。数人の小学生が通っているが、かれらの作文を東京在住の著者も添削し、名古屋に戻った際には実際に指導もする(そのため著者は「東京先生」と呼ばれている)というのが、この著書の背景になる。

 本書は第一講から第十講という形で章立てされており、四月から一年間に渡って実際に行われた添削の模様が紹介される。ただ、単純にこういうふうに添削したという内容を紹介するだけではなく、子どもたちにどうやって作文を書く気にさせるかという点を強調しているんだが、それが本書の大きな特徴ということになる。そもそも子どもたちは、学校でお行儀の良い作文を書くよう指導されるため、基本的にあまり作文を書くことが好きではない。そういう子どもたちに自由にのびのびと文章を書かせ、その楽しみに触れさせようという趣旨が気持ち良い。

 そのため著者は、彼らの作文を褒めながらも、こうしたらもっと良くなるというアドバイスを与える。その結果、子どもたちの作文も時間を経るごとに良くなっていく……という按配。実際、紹介される作文を見ると、最後の方の作文は初期のものに比べてずっと良くなっている。ただ著者によると、皆が皆、作文の質が非常に向上するというわけではないということである。いつまでも拙い文章のままという子どももいるし、事実だけを淡々と述べ自分がどう感じたかを表現しない子どももいるらしい。

 それでも子どもの作文を読むのは面白いし、成長に接するのも楽しいというのが著者の感覚である。そのため、あちこちに愛情が感じられて、読んでいて気分が良くなる。気持ちの良い本である。

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