1秒24コマのぼくの人生
りんたろう著
河出書房新社
日本アニメのミクロ的な歴史

アニメ監督であるりんたろうが、フランスの出版社の申し出で、自らの生涯を描いたバンド・デシネを描き起こした。ちなみにバンド・デシネはフランス版のマンガであり、本作は言ってみれば自伝的マンガということになるわけだが、日本ではなかなか実現しないような企画である。
りんたろうは、日本のアニメ草創期から近年までアニメーション製作に関わった人で、代表作としては、テレビ版『キャプテンハーロック』の他、映画版の『銀河鉄道999』、『幻魔大戦』などが有名。東映動画の『白蛇伝』や虫プロのテレビアニメ『鉄腕アトム』などにも関わっており、まさしく日本のアニメ史を地で行くような存在である。僕自身も子どもの頃見ていたアニメでよく「りんたろう」という名前を目にした記憶がある。覚えているのは『星の子チョビン』だが、本書によると、これはどちらかというとやっつけ仕事の類だったようである。
本書であるが、大判ハードカバーの大著で、書店で実物を目にしたときは少し驚いた。ちょっとした美術本の趣さえあり、さすが(芸術性に価値を置く)バンド・デシネという印象である。トータルで250ページほどで、全編非常に丁寧に描かれていて、手抜きはまったく感じられない。バンド・デシネらしくト書きというか説明書きがきわめて多く、そのあたりが日本のマンガとの大きな違いかも知れないとあらためて気づいた。もっとも最近の日本のマンガにも説明書きが多いものが増えているが。
内容は大変興味深く、アニメ創生期の状況や、アニメが映画に進出した時代、言わばアニメ全盛期の状況がよくわかるようになっている。これは著者の活動した時期が日本アニメの草創期・黄金時代と重なっており、しかも著者がその最前線に位置していたためで、結果、この時代の記録としても非常に価値が高くなっている。物語の中では手塚治虫や大友克洋も登場し、著者の幅広いアニメ人脈も興味深いところである。虫プロ時代、夜遅く手塚治虫が自転車で自宅まで迎えに来て(できあがっていた『鉄腕アトム』に問題があったため)、自転車に二人乗りしてスタジオに向かったという話は、著者にとってもそうだろうが、その話に触れた読者の側にとってもきわめて印象的で、とても良いシーンである。
このように良い本なのではあるが、先ほども言ったようにそれなりに大きいため、置場に困る本でもある。豪華本は確かに結構だが、そういう難点が生じる。
第29回手塚治虫文化賞マンガ大賞受賞






