元禄御畳奉行の日記 尾張藩士の見た浮世
神坂次郎著
中公新書
斬新な内容だが読みづらさもある
先日紹介したマンガ版『元禄御畳奉行の日記』の原作。
マンガを読んだ後こちらの原作に当たったが、驚いたことに、あのマンガ版、この原作のかなりの部分を描ききっていた。しかもマンガ版は、時系列に従って物語的にストーリーが展開するため非常にわかりやすいという利点もあった。
この原作では、マンガ版と違い、テーマ別に記述を集めてそれについて解説していくという構成で、話が前後するため少々分かりづらさがある。また、オリジナルの『鸚鵡籠中記』の記述をそのまま抜き出している部分が多く、中には内容についてあまり解説していない箇所もあるため、ところどころ読みづらくなっている。そもそも『鸚鵡籠中記』自体、日記であるため誤字や当て字が結構あり、解読しなければ読めない部分がある。また原文で読む場合、その背景について知らなければ、意味不明な部分もある。そのため、原文をそのまま提示されるという方法は少々不親切に感じる。
内容はマンガ版と同様、『鸚鵡籠中記』を紹介するもので、朝日文左衛門の日常と身辺雑記が紹介される。ただ、あのマンガ版がこの本の内容のかなりの部分を汲み上げているため、正直あのマンガを読んでいれば、こちらの原作は読む必要がないんじゃないかと感じる。そういう点でもあのマンガ版は出色のデキと言うことができる。横山光輝おそるべしである。