マンガ 線形代数入門
鍵本聡原作、北垣絵美漫画
ブルーバックス
「行列」の予習・復習にどうぞ
マンガで線形代数を教えようという試みの本。
線形代数とは何かすらそもそも知らなかったんだが、どうやら昔高校で習った「行列」のことをいうらしい。なんでも今は高校の履修課程で「行列」をやることがないらしく、そうすると大学で数学をやる人々はいきなり高度な線形代数に取り組まなければならなくなるため大変だという、著者によると。そのために、かつて高校でやっていた程度の線形代数を簡単に教える方法は無いかということでこのマンガができたという。
線形代数=行列というのも意外だが、高校で今「行列」を教えていないというのも意外で、教科の内容がこれほど劇的に変わることがあるなんて知らなかった(特に数学の場合)。もっとも「行列」についてはすっかり忘れていたし、高校でどういう内容のことをやったかもまったく憶えていないくらいなんで、元々高校数学ではあまり重視されていなかったのかも知れない。
さてその行列なんだが、この本では単位行列や逆行列、それから行列式などが比較的簡単に理解できるようになっている。ここらあたりはそれほど無理がないが、その後、一次変換が出てくると雲行きが怪しくなり、「固有値と固有ベクトル」の項でハミルトン・ケーリーの定理が出て来た日には、面白さはわかるがなんだか茫洋として「わかった」感はなくなる。最終的には3×3行列まで紹介されるんだが、このあたりはもう見て楽しむというレベルである。全体的に「わかった」という実感はないが、線形代数のイロハはわかるという程度である。著者もその辺を狙っているようで、一応狙いは成功しているんじゃないかと思う。
作画はプリミティブで、マンガの展開もとりたててどうということはなく(当然)学習マンガの範疇を出ない。いかにもブルーバックスというような本ではあるが、これはこれで結構ではないでしょうか。