火打ち箱
こんなアンデルセン知ってた?
H.C. アンデルセン・原作、赤木かん子・文
高野文子・ペーパークラフト
フェリシモ出版
高野文子のペーパークラフト!
アンデルセン原作の『火打ち箱』という童話を、赤木かん子という、本の研究者が現代風に書き下ろしたもの。この本は実質的に絵本であり、各ページに、高野文子作のペーパークラフトの写真が挿絵代わりに入っている。
高野文子といえば、知る人ぞ知る、寡作のマンガ家である。出色のマンガ作家で、新刊が出れば僕はすぐに買っているほどであるが、同時におそろしく寡作である。新刊が出るのは数年に1冊くらいのペースだったが、ここ20年ほどは新作が出ていないんじゃないだろうか。といっても完全にマンガをやめたわけではなく、ごくたまにイラストや超短編を目にすることもある。CDジャケットに彼女のイラストが使われていたこともある(『AURA』、『お帰りなさい』など)。おそらくいろいろな業界にファンがいて、そういう人達が仕事を依頼しているのだろう。この絵本も、その高野文子のペーパークラフト(!)で彩られている。僕の目当ても高野文子であった。
1回目は、この『火打ち箱』という話の面白さ(アンデルセンだけに例によってちょっと残酷さもあるが)を楽しみ、次は高野文子のペーパークラフトに目を凝らしてページを繰る。そしてあらためて、その面白さに脱帽する。このペーパークラフトも、高野文子の他の作と同様、なんだか奥が深く、結局何度も目を凝らすことになった。不思議な味わいがある。
最後のページに、どうやってこのペーパークラフトを撮影したかを表す、高野文子自身の手によるイラストがあるが、おそろしくアナログな作業であることがわかる(自身の手で撮影までやったようだ)。この状況を頭に入れてから、あらためてペーパークラフトを鑑賞するが、そうすると一層味が出てきて、もう一度楽しむことができる。やっぱりこの人はただ者ではない……と思った。
挿絵はこのように出色であるが、赤木かん子の文章に少しわかりにくい箇所があった。もう少し整理すると読みやすくなるかも知れない。蛇足であるが、『火打ち箱』のアイデアは『マグマ大使』によく似ていた。手塚センセイ、ここから流用したのだろうか。