ホライズンブルー
HORIZON BLUE
近藤ようこ著
青林工藝舎
幼少期のトラウマの扱いが先見的
1988年に『ガロ』で発表された、近藤ようこのマンガ作品。母親の子殺し(未遂)を扱っている。
主人公の若い母親は、幼少期の母子関係、姉妹関係がトラウマになっていて、自分の子どもにうまく対応できない。夫婦関係にも幼少期のトラウマが影響するなど、精神的に闇を抱えている。そしてその感情が子どもに向かうというようなストーリーである。
進行する現実が、過去の回想やいろいろな思いと交錯するようなストーリー展開で、非常に意欲的な物語である。「あとがき」によると、「実際に子殺しを行った女性の精神分析の記録」が「間接的なモデル」になっているということで、そのあたりがリアリティに繋がっている一因ではないかと思う。ただ僕自身は、過去のトラウマと現在の行動がやや飛躍しすぎているようにも感じた。こういう一面も動機としては当然あり得るが、(当時よりいろいろなことがわかってきた)今の視点で見るとだともう少し掘り下げが欲しい気もする。ただ35年前にこの作品を描いたという先見性には脱帽である。近藤ようこは侮れないとあらためて感じる。