フランス人記者、日本の学校に驚く

西村カリン著
大和書房

「なぜ」という視点は確かに必要だ

 日仏教育比較論である。現在日本に住んで子どもを日本の公立小学校に行かせているフランス生まれ・フランス育ちの西村カリンさん(じゃんぽ〜る西の奥方)が、日本の教育とフランスの教育の違いについて論じる本。

 〈これは「フランスの教育がすごい」という類の本ではありません。〉と書かれているように、どちらの教育が優れているとか優れていないとかいう議論は出てこないが、日本の「これはルールだから従わなければならない」式の盲目的な強制については大いに疑念を持っているようだ。フランスでは「なぜ従わなければならないか」を徹底的に教え、みずから考えさせて議論する方向に持っていくらしく、確かにその方が合理的であると思う。日本の教育でも「なぜか」という視点を常に盛り込むべきと考えている僕は大いに賛同する。

 だが、日仏比較論を期待していた僕にとっては、フランスの事情の紹介が非常に多くなった後半はかなり退屈した。正直他国の状況にはそれほど関心がないわけで、日本と異なる点や優れた点・劣った(と思われる)点だけを紹介してもらえば事足りるのである。このあたりの感想は、同じ著者の『フランス人ママ記者、東京で子育てする』にも共通しているため、あるいは著者(または編集者)のスタイルなのかも知れない。

 いずれにしても、他国の事例の良いところを取り入れて「よい国」を作り上げるのが理想なのであって、「疑念を持って議論する」というアプローチも、取り入れるべき良い要素だとは思う。もっとも日本でこういう新しいことを教育に取り入れたりすると、今のIT教育を引き合いに出すまでもなく(推進者、担当者が本質や理念についてよく理解できていないことから)大概めんどくさいことになって、妙な方向に行ってしまうものだが。

-随筆-
本の紹介『フランス人ママ記者、東京で子育てする』
-マンガ-
本の紹介『私はカレン、日本に恋したフランス人』
-マンガ-
本の紹介『モンプチ 嫁はフランス人』
-マンガ-
本の紹介『パリ、愛してるぜ〜』
-マンガ-
本の紹介『おとうさん、いっしょに遊ぼ』
-マンガ-
本の紹介『理想の父にはなれないけれど』