うつ病になってマンガが描けなくなりました
相原コージ著
双葉社
内容はともかく
価格についてはかなり不満

著者の相原コージ、名前は知っていたがマンガは読んだことがない……僕にとってはそういう作家である。一時期『コージ苑』というマンガがかなりヒットし流行語になったことから名前を知っているという程度である。『コージ苑』以外にもいろいろな作品を描いて発表してきており、トップレベルのマンガ作家であるようだ。
そんな作者だったが、うつ病になり、マンガが描けなくなった。それまで次々にアイデアが湧いて出ていたのが、からっきし出なくなり、やがてまったく描けなくなった。そこで、アイデアが出ないのなら、実際に経験したことなら描けるだろうということで、うつ体験をマンガ化することにし、そこでできたのがこの作品ということになる。吾妻ひでおの一連のうつ病作品を思い起こさせるエピソードである。
ページを開いてまず驚くのが、それぞれのコマと文字が非常に大きいことで、吹き出しの中の文字は雑誌の見出し並みの大きさで書かれている。だからと言って手抜きというわけではなく、描写はかなり丁寧である。最初に自殺しようとしたシーンは、冒頭と途中に2回出てきて、非常によく似た構成(ほぼ同じネーム、コマ割り)になっているが、コピーではなく、描き直していることがわかる。非常に丁寧な仕事で、完成度も高い。うつ病の特徴かも知れない。また笑いのセンスや間の取り方もピカイチで、さすがにトップレベルのマンガ家と思わせる完成度である。
著者のうつ病については、本書を読む限り、医者の誤った薬の処方が原因ではないかと勘ぐってしまう。言わば現代「医療」によって作られた病気(ケモブレインの類)ではないかと感じるが、何と、著者の相原氏、この後精神病院の閉鎖病棟に入れられることになる。それは第2巻でということになっている。
正直なところ、この類の本は借りて読みたいと思っているのだが、図書館に置いていなかったため、今回買って読んだのだ。先ほども書いたように内容は真摯に描かれていて決して悪くはないが、1,650円というかなりお高い価格設定になっていて、それに何度も読むような本でもないし、買ったことに多少の後悔はある。そういうわけで値段設定にはかなり疑問を持った。第2巻にも興味はあるが、値段が値段だし大いに躊躇しているところだ。