統合失調症になった話
ズミクニ著、岩波明監修
KADOKAWA
日本のマンガの裾野は広い

タイトル通り、統合失調症になった人が自らの経験を描いたマンガである。
勤めていた会社を辞めてから幻覚や妄想が現れ始め、地元の精神科病院に行くも門前払いを食らう。さらに交番に行っても応対してもらえなかったことから、受け入れてくれる病院を目指して上京したものの、銃で撃たれる幻覚を見て卒倒する。その後保護され、措置入院の手続きがとられて、都内の精神科病院に入院。3カ月の措置入院、任意入院を経て退院し、職に就き、いろいろありながらも3年後に寛解するという過程をマンガに描いた作品である。
入院時の話がかなりの割合を占めており、精神科入院を疑似体験できるという点では吾妻ひでおの『失踪日記2 アル中病棟』に近いとも言える。また、日常生活に異常を来していたときの経験や、退院してからの苦労や変調なども画像化されて具体的に描かれているため、統合失調症の経験がよく伝わってくる。
絵は、簡略化されたマンガ的なものではあるが、手抜きはない。内容は本来暗いものなんだろうが、マンガであることから暗さを感じることはない。途中4コマ・マンガが挟まれるなど構成にも工夫があり、真摯な本という印象である。元々ツイッターに発表していたものをまとめたものということで、日記の延長とも言えるが、内容としてはなかなか斬新で、読む価値は十分になる。統合失調症の理解にも繋がるのではないかと思う。
本の紹介『今日もテレビは私の噂話ばかりだし、空には不気味な赤い星が浮かんでる』
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本の紹介『脳の配線と才能の偏り』
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