今日もテレビは私の噂話ばかりだし、空には不気味な赤い星が浮かんでる
〜統合失調症の私から世界はこう見えた〜

Himaco著
KADOKAWA

統合失調症の女性の手記

 タイトルから推測できるように統合失調症になった人のエッセイマンガである。

 通常の社会生活を送っていた著者だが、少しずつ奇行が増え始め、躁鬱症状や被害妄想も出始める。やがて統合失調症の診断を受け、通院・入院を経て今に至るという半生を記録したものである。

 かつて『分裂病の少女の手記』という本が発表されており、読んではいないが、前からかなり気になっていた。この本でも統合失調症の人の精神世界が描かれており、そういう点ではあの本に内容は近いのかも知れない。いずれあちらも読んでみようかという気になる。

 ただこちらの本は、マンガであることから、著者が見ていた世界を絵で表現できているという点で画期的である。またページ数も比較的少ないため読みやすさもある。何より色彩が非常に美しく、統合失調症の世界が美しいのか、単に著者の表現力が優れているのかはわからないが、本書の魅力になっている。

 近年、本書と同様の統合失調症経験者のエッセイ・マンガも増えているようで、日本のマンガ文化の裾野の広さをあらためて感じる。こういったマンガ作品が、統合失調症への理解にも繋がるのではないかと思う。

-社会-
本の紹介『脳の配線と才能の偏り』
-思想-
本の紹介『この人を見よ』