お金さま、いらっしゃい!

高田かや著
文藝春秋

主婦雑誌に出てくるようなネタばかり

 (著者のいわゆる)カルト村(おそらくヤマギシ会)で生まれ育った著者は、その組織内の高等部(高校みたいなもの)卒業を機に「村」(彼らは自身のコミューンをこう呼ぶ)を離れて、一般社会に出てきた。そこまでのいきさつは、前二作(『カルト村で生まれました。』『さよなら、カルト村』)で描かれていたが、その後の著者の生活について紹介したマンガがこの本。

 「村」では基本的に金を使うことが禁止されており、そのために著者は「村」を出るまで金をほとんど使ったことがなかった。「村」を出てからは、バイトを始めて自分で稼ぐことを知り(〈「村」の労働と比べるとはるかに〉軽い労働で月に13万円ももらえたということが信じられなかったらしい)、その後もいろいろなものを自由に買えることに喜びを見出す。同時に金の使い方についていろいろと考えることもあり、蓄財や節約の方法も自分で見つけていく。そしてその過程やそういった方法などをマンガとしてまとめたのがこの本である。

 これまでの著者の本では、「村」での生活の様子や「村」の生活と外の生活とのギャップなどが一番面白かったわけだが、この本では前の二作と違って、そういうところにはあまり焦点が当たっていない。言ってみれば外の世界に出てからの生活をまとめた「娑婆」編であるため当然だが、そのために正直大して面白味がない。主婦向け雑誌に出てくるような節約ネタばかりで、あまり興味が湧かないし目新しさも感じない。そういう類の雑誌での連載が初出かと思ったくらいである。

 またマンガ自体についても、説明書きがきわめて多く、マンガであるのは確かだが絵が挿絵のレベルにとどまっている。要するに説明過剰なんで大変読みづらい。ただし作画自体はうまく、表現力はなかなかのものとは思う。しかし内容が内容だけに、先ほども言ったようにあまり感じるところがなかったのも事実である。せっかくの表現力が活かされていないのがはなはだ残念な部分である。

 やはりこういったエッセイ・マンガは(あるいはエッセイもそうだが)特異な体験や異次元の感性でもなければ、読んでいて惹かれるところは少ない。そういう意味では、このカルト(ヤマギシ)シリーズは本書で完結ということになるんじゃないかと思う。言い換えると、これまでの2冊ですでに一定の役割は果たした!ということである。

-マンガ-
本の紹介『カルト村で生まれました。』
-マンガ-
本の紹介『さよなら、カルト村』New!!
-マンガ-
本の紹介『カルト宗教やめました。』
-マンガ-
本の紹介『カルト宗教信じてました。』
-マンガ-
本の紹介『よく宗教勧誘に来る人の家に生まれた子の話』
-社会-
本の紹介『「カルト宗教」取材したらこうだった』