ヨーロッパ史入門 市民革命から現代へ

池上 俊一著
岩波ジュニア新書

教科書的な「ヨーロッパ通史」

 岩波ジュニア新書の『ヨーロッパ史入門』は、古代から近世までを描いた『ヨーロッパ史入門 原形から近代への胎動』と本書(『市民革命から現代へ』)の二部構成になっており、この2冊でヨーロッパ史を網羅的に紹介しようというコンセプトの本である。世界史を少し復習してみようと思い、今回読んでみた。

 内容は東ヨーロッパを含むヨーロッパ全体の歴史であるため、どうしても網羅的にならざるを得ず、結果的に教科書風の記述になっていたのは仕方ないところかも知れないが、それがために面白味のない記述になってしまっているのは残念。著者は「あとがき」で「教科書のような無味乾燥な叙述をさけようと努めてきたつもり」と書いているが、残念ながら必ずしも著者の意図通りにはなっていない。ただ本書の第4章「ヨーロッパはどこへ?」については、現代から未来を見据えた記述になっており、まったく教科書的ではないが、少し著者の独断が過ぎる印象である。これはこれで大いに疑問が残る。

 本書では、ヨーロッパ史を目指しながらも、あちこちの国ごとの事象を取り上げているために、途中で時代を前後したり、このできごとが後のページのあそこに繋がるというような記述が頻出することになる。そういう方法論が余計に教科書的にしてしまうのである。歴史の中の重要事項を網羅しようとすれば、この本のように歴史の対象となる地域が広い場合、どうしてもそうならざるを得ないわけである。したがって、ヨーロッパの歴史を通史として(教科書的でない方法で)描くならば、細かい事件・事象に目をつぶり、対象地域全体を網羅するような総合的な流れのみに焦点を当てるしかないのではと思う。もちろんそういう本であれば、ヨーロッパ史を紹介する本としては非常に物足りないだろう。そうすると、やはりある国の通史みたいな形式でないと、雑多になりすぎて、どうしても教科書的な記述に終始するのではなどと考えたりもする。

 以上をまとめると、本書を世界史の復習(または概説)として読むならば、よくまとめられていることから決して無駄ではないが、この本を通じて何か新しい情報を得ようとするならば、あまり期待はできないという結論になる。読んで時間の無駄だとは思わないが、身がつまっていて充実しているというような書でもなかった。

-世界史-
本の紹介『フランス革命』
-世界史-
本の紹介『砂糖の世界史』
-世界史-
本の紹介『食べものから学ぶ世界史』
-世界史-
本の紹介『チョコレートの世界史』
-世界史-
本の紹介『土の文明史』
-世界史-
本の紹介『世界史とつなげて学ぶ 中国全史』