国会議員とカネ
元政策秘書が見た「バラマキ」と「錬金術」
朝倉秀雄著
宝島社新書
就職活動に数千万円かける人たち

元国会議員政策秘書の著者が暴く、国会議員の異常な金銭感覚。
本書の著者、朝倉氏は以前、テレビ東京系の深夜番組『解禁! 暴露ナイト』に出演し、国会議員のカネの実態を赤裸々に語っていて、元々僕はそれを見て著者に興味を覚えたんである。とにかくその語り口がハンパないというか、「政治家になる人間というのは厚顔無恥で、自我が強く、自己中心的な人間が多い」などとあっけらかんと語るのだ。ちなみにこの表現は本書にも出てくる(本書193ページ)。また「できもしないことをマイクを通して大衆の面前で大声で喚き散らし、当選するや、公約など忘れたようにとぼけてしまう。国会議員というのは生まれつきペテン師の素質を持つ者が多い」(本書221ページ)などという記述もあって笑わせてくれる。
これまで8人の国会議員に仕えたという著者、多くの議員に共通して言えるのは金に汚いことだと主張する。そもそも国会議員には、歳費(給料みたいなもの)として112万7333円、期末手当(ボーナスみたいなもの)として年間約280万円が支給される。しかもその他に活動費として、無税で領収書不要の文書通信交通滞在費が毎月100万円支払われている。ということは1人あたり年間3000万円以上が国庫から支払われるわけだ(他にもいろいろと手当がある)。しかも議員秘書(政策秘書、第1秘書、第2秘書)については、国から直接彼らの報酬が支払われるため、実質的に議員が金に不自由することはないはずなんだが、どの議員も始終金に汲々としているというのが実情らしい。中には秘書の給与までピンハネする議員がいたり、勤務実態がない架空の秘書を作って報酬だけ懐に入れる議員すらいるという(この手口、前に世間で話題になった)。で、実際議員が法案提出などの本来の仕事をしているかというと、ほとんどそんな議員はいなくて、要はほとんど仕事せずに金だけもらっているんだというのが著者の主張である。ちなみに日本の議員報酬は先進国の中ではかなり高い方だというのも著者の主張。
なぜ、ろくに仕事をしない議員がそんなに金に困っているかというと、次の選挙で当選するために現ナマが必要なためである。つまり国会議員は本来の仕事をないがしろにして、自分の次の選挙の準備、いわば就職活動に公費を使いながら精を出していることになるわけで、しかもその金はそのまま有権者に実弾として送られるというんだから、もう何やってんだかわけがわからない世界である。
もちろん政治家が金に汚いというのは経験的に知っているが、ここまで具体的に書かれるとむしろ逆に感心してしまう。中には選挙で金を使いすぎて自己破産したり妻と離縁したりする議員もいるらしく、金に取り憑かれた亡者の末路を見るようであわれでもある。ましかし、本来であれば選挙民もこの程度のことを知っておいた上で政治家に対峙するのが筋であって、そういう意味でも著者がテレビ番組で内実について率直に語ってくれたのは良かったと思う。この本も個人的には、是非多くの人に読んでもらいたいと思う。ただセコイ話が満載で少々呆れてしまうことが多いので、ちょっとだけ覚悟が必要だということを付記しておく。

