塾講師にだまされるな!
黒い講師著
主婦と生活社
教育のブランド化に踊らされないようご用心
中学受験塾の講師が、その手の塾の内情を暴いた本。
実際に担当している生徒の例を具体的に紹介しながら塾講師の日常を描くという内容で、元々はブログだそうだ。塾講師が親を乗せて金を使わせる戦略が紹介される他、生徒の親が現状(つまり生徒の実力)を適確に把握できず、子どもに無理な難関校を目指させるような状況も描かれる。子どもの成績をネタに親を脅すようにして金を出させる(つまりは個別授業を増やす)方法は悪どいとも言えるが、あちらもビジネスであるから、第三者的には問題があるとも言えない。それよりも、親が異常に子どもの中学受験に肩入れする姿が傍から見ていてあまりにバカバカしく感じられる。多くの親が名門中学入学がゴールのように考えているフシがあるのもどうかと思う。親、そして親からいろいろと吹き込まれた子どもが、極度の学校ブランド志向になっている状況が紹介され、かなり異常な世界に映る。
試験直前になると親たちが異常な姿を見せ始めるのもはなはだ奇異に映り目も当てられない状況に見えるが、そういう状況を世の中に紹介しているという点で、考えようによってはこの本も意味のある本かも知れない。
ただ、「バカ親」とか「バカ生徒」とか、随所に差別的な表現があり、読んでいて結構不快な気分になる。確かに愚かな人々ではあるが、彼らに生計を負っている立場の人間がこういった高飛車な態度で臨むのが正しいのか、少なくとも公の場でこういう表現を使うことが良いことなのか、考えた方が良いんじゃないかと思うが如何。読んでいてなんだかこちらが「バカ」だと言われているような気がしてならないが、そんな俺がバカなのか? それにどことなく、いろいろな問題点を前にして著者が開き直っているような感じも窺われる。そういうわけで、この著者にもこの本にもシンパシーは感じないし、冷静に考えるとどちらがバカなんだかわかりゃしない。
それはさておき、本書からは中学受験周辺のおかしくももの悲しい様子がよく伝わってきて、それについては収穫と言える。関係者もいい加減こんなくだらない状態から脱却したら良さそうなものだが、一方でこういう傾向を助長して儲ける著者みたいな立場の人がいるのも事実。まあ、受験サービスの利用者も、その利用者を利用する受験サービス側も持ちつ持たれつの関係ということなんだろう。
いずれにしろ、こういった風潮に巻き込まれこういった人々に食い物にされないよう、誰もが自分の五感と自分の頭を使って、ものごとを判断することが必要というところに落ち着くのではないかと思う。
なお当逍遊ゼミナールは、こういう受験サービスと一線を画していると自負しており、中学受験からは距離を置いていることも明記しておく。