日本語の文法を考える

大野晋著
岩波新書

国語学の面白さが凝縮

 国語学者、大野晋の代表作と言っていいんじゃないかという著作。僕自身、過去に2回読んでいるんで、今回で読むのは3回目ということになる。

 日本語の文法を含むさまざまな側面について考察し、日本語の特質を明らかにしようという試みで、おそらくこの本の刊行時(1978年)での著者の研究成果がぎっしりと盛り込まれているんじゃないかというくらい、内容が多岐に渡りしかも充実している。日本語文法の研究、外国語との比較研究を通じて、過去から現代まで通じる日本人のものの考え方にまで迫るという非常に意欲的な本で、僕の中では、岩波新書の中で最高の称号を与えたいという著書である。僕はこの本を読んでから国語学に大いに興味を持ったのだ(専攻はしなかったが)。

 さて内容だが、先ほども書いたように非常に多岐に渡る。特に目を引いたのが、「主格の助動詞「は」と「が」の意味の違い」と、「係り結びの法則の起源と本当の意味についての考察」で、これは目からウロコであった。高校の国語学習で勉強する退屈な事象が急に鮮やかに光を放つようなそんな印象さえ持った。最初に読んだとき僕はまだ学生だったが、これこそが学問というもので、高校までの勉強が学のほんの表層をさらっただけのものだということにあらためて気付いたのだった。他にも「古語の助動詞の考察」や「サンスクリット語との比較」なども今読むと非常に深い。

 こういった文法面についての考察を通じ、日本語には西欧語と違った時間感覚があり(過去、未来を時間軸として捉えず、自身の経験から見ていく)、さらにウチとソトを明確に区別するという特徴もあるという結論に至る。このあたり日本人の特質をよく表しているとも言えるが、それは日本語が、具体的なものの記述に長けた言語(動詞が多い、オノマトペア - 擬態語・擬音語 - が多いなど)であるという側面とも関連している。

 何度も言うが内容が相当広範囲にわたっているので、ここで紹介しきれないが、国語学の面白さが詰まった知的好奇心をくすぐる本である。「くるま」という名詞が「クルクル(回る)」という擬態語から来ているとか、「光る」という動詞が「ピカリ」という擬態語から来ているなどという記述も面白い。小さい頃から違和感を抱いていた『ウルトラマン』の主題歌の2番の歌詞「手にしたカプセル、ピカリ光り」のモヤモヤが、スッキリ解消されたような気分になった。

-古文-
本の紹介『古典文法質問箱』
-国語学-
本の紹介『日本語の起源』
-国語学-
本の紹介『日本人のための日本語文法入門』
-漢文-
本の紹介『漢文法ひとり学び』