まんがで読破 ダンテ・作 神曲
ダンテ原作、バラエティ・アートワークス作画
イースト・プレス
『神曲』の内容はよくわかるが
『神曲』自身はいけ好かない
ダンテの『神曲』のマンガ化作品。内容は原作に沿っているようで、そのあたりは評価できる。また、内容自体、映像化、マンガ化に適した素材で、このシリーズの中ではよくできた方に入る。
『神曲』は「地獄篇」、「煉獄篇」、「天国篇」の三部構成になっていて、ダンテが、古代ローマの詩人、ウェルギリウスの案内で地獄、煉獄、天国をめぐるという叙事詩で、非常にキリスト教的な著作である。内容はと言えば、ダンテ自身が敬虔なカトリック信者だったこともあるが、非キリスト教徒から見るととてもジコチューに感じられ、ちょっと受け入れがたい部分もたくさんある(なんせギリシャの哲人が地獄にいる〈落とされている〉んだから)。それに、本書に登場する永遠の恋人、ベアトリーチェに対する思いも少々偏執的で、この本による限り、ダンテ自身もちょっと危なそうな人物に見受けられる。だが『神曲』がヨーロッパの古典であり、ルネサンスの先駆的な作品と言われているのだから、その内容についても少しは知っておきたいところである。そういう意味でもこのマンガ化作品は価値が高いと言える。
先ほども言ったように、個人的には不快に感じる記述が多いので、原著に当たることは今後もないだろうと思う。
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