もう一度 微分積分

今野和浩著
日本実業出版社

微分積分は不可思議千万で面白いが
ほとんどの人は実生活で一生使わない……間違いない

 微分法・積分法はどことなく形而上学けいじじょうがく(神を探求する哲学)の臭いがする。神のような「大いなる存在」を前提にしなければ、理解できないような雰囲気がある。実際、微分法を発見したライプニッツは哲学者としても名高く、ニュートンに至っては神学者である。そのため、高校生のとき形而上学に関心を持っていた僕は、微分積分法にも割に関心があった。もちろん受験で必要だったために勉強したんだが、しかしそれだけではない面白さがあったのも事実である。ただ、微分積分法、理科系の学生ならいざ知らず、僕のような人間にとって、受験期以降接することは皆無であった。微分積分を実生活で利用するような場面がまったくないためである。受験生が「微分積分なんて普通の生活を送る上でなんの役に立つんだ!?」などと問いかけることがままあるが、あれも十分頷けるというもの。実生活で使うことなどまったくない! これについては断言できる。

 というわけで、かつては多大な興味を持っていた微分積分法もすっかり忘れてしまい、なんとなく「神がかり」だったことぐらいしか覚えていない。大学受験のために随分一生懸命勉強して多大なエネルギーを投入したにもかかわらず、頭の中にはほとんど何も残っていない。そういうわけで前々から機会があれば少し勉強し直したいと思っていたが、そんなときに出会ったのがこの本。実は先日、もう一冊、高校数学を復習する本を読んだのだ(『1週間でツボがわかる! 大人の「高校数学」』)が、微分積分法については両方の本で大分かぶっていた。ただしこの『もう一度 微分積分』の方は、微分積分法に特化しているため、『1週間で……』よりも内容はかなり詳細かつ高度で(おそらく)数学III(高3で履修する数学)レベルのものも入っている。

 内容は、先生と生徒の対話形式で、このあたり『化学の学校』を彷彿させる。対話形式ということでわかりやすくすることを狙っているのだろうが、それが奏功しているかはよくわからない。結論から言うと、すでに学習済みの内容についてはよく理解できたが、今回初めて習った内容(数学IIIの項目)については、一部ついていけない部分があった(「合成積分」「置換積分」については理解度50%ほど)。まあしかし、全体を俯瞰的に捉えられるという点では、こういう部分についても評価できると思う。一番大事なのは、高校の授業で割にないがしろにされる微分積分法の原理(法則の背景)について、比較的詳細に解説があったことで、僕のような人間にはこのあたりが実は一番面白いのであった。

 全体の構成は、微積で必要になる基礎事項(前提条件)が1章、微分が3章、積分が2章で、読み終わるのに結構時間がかかったのも事実である。先の『1週間でツボがわかる……』が1週間程度で読了したのと対照的である。そのあたり、内容がやや高度だったせいかもしれない。このテの本は、とばし読みみたいに読めたら理想的なんだろうが、やはり「数学はなんといっても積み重ね」であるため、最初から通しで読まないと苦しいかも知れない。まあ、暇な社会人向けの本と言えなくもない。

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