クール・ジャパン!? 外国人が見たニッポン
鴻上尚史著
講談社現代新書
日本はどうやら不思議の国らしい
(タイトルの)「クールジャパン」という言葉を聞くと経産省が音頭を取っている文化輸出戦略をイメージする人が多いかも知れないが、この本で扱われているのはあれじゃなく、NHK-BSで放送されている『cool japan』というテレビ番組を指す。
昨今巷にはびこっている「日本ってすごい」みたいなうぬぼれ論は聞いていて辟易するし浅薄さも感じる。竹田某とか言ういかがわしい文化人がテレビでしきりに日本ってすごいんですよなんてことをまことしやかに語っているのを目にすると、詐欺師、軽薄、単純、自意識過剰などという言葉が頭の中を駆け巡るが、こういういかさま師に影響を受けて同じような話を受け売りする人間が増えるのかと思うと暗い気持ちになってしまう。
そういう僕ではあるが、NHKの『cool japan』は10年以上前から見ている。この番組は別に日本を褒めそやすことだけを目的とした番組ではなく、外国人から見た日本の習慣や文化について語るというのがコンセプトで、言ってみれば「外から見た日本」論なんである。こういうのは昔から結構好きなんだな。だから別にクールな(かっこいい)部分だけでなく「ここが変だよ日本人」みたいな部分も好きなんだ。そう言えばかつては「ここが変だよ」の類の番組が多かったが、最近はその逆のコンセプトの番組が多く、繰り返しになるが傲慢さと軽薄さが鼻について気分が悪い。「謙虚な日本人」という部分が本来、日本人の一番の美徳だったはずだが。
で『cool japan』なんだが、タイトル通り「かっこいい日本」を在日外国人が見つけるというのがコンセプトの番組である。ではあるが、取り上げられるのはポップ・カルチャーの類も多く、そういうのになると、日本人であるこっちの方が「そんなもんかっこわるいわ」と思ったりもする。実際、番組に参加する外国人の方々も(ポップ・カルチャーに限らないが)国籍を問わず賛否両論あって、議論が白熱してきたりするんで面白い。ただ一つわかるのは、普段日本国内で何気なく使っていたり目にしたりするようなものも、世界水準で見ると実は珍しいものであったり奇妙なものであったりするということで、それがこの番組の一番の面白さだとぼくは思っているのだ。
さてこの本だが、『cool japan』の司会を務める鴻上尚史が、この番組を通じてわかったことや感じたことなどを忌憚なく書くという内容であるが、これまでに番組で紹介された「さまざまなクール」(「さまざまなアグリー」も)が出てくるんで、『cool japan』を見ている人にとってはあまり目新しさはないかも知れない(実際僕には目新しさはあまりなかった)。ただ今までこの番組を見たことがないという人にとっては、目からウロコかも知れない。外国人から見るとこんなものが面白いのかという発見があると思う。たとえば、アイスコーヒー、ストレートパーマ、ニッカポッカ(労働者がはいているタイプのもの)が「クール」と言われても多くの日本人にとっては「??」ではないかと思う。
また、著者が日本の習慣・文化について、「世間」と「社会」に基づいて分析している箇所(第3章「日本は世間でできている」)もなかなか読み応えがある。文章も話し言葉に近いので非常に読みやすくそのあたりもポイントが高い。