室町の覇者 足利義満
— 朝廷と幕府はいかに統一されたか
桃崎有一郎著
ちくま新書
面白い視点もあるが冗長
タイトル通り、足利義満が歴史において果たした役割について論述する本。
足利義満は室町幕府の三代将軍だが、幼少時に将軍職に就き、その後紆余曲折あるも、武家と公家の頂点に君臨するようになる。公家の頂点に上りつめることによって南朝と対等に交渉できるようになった結果、南北朝の争いも終結させ、南北朝合一を成し遂げる。また、権勢を誇る他の有力守護大名も、明徳の乱(山名氏清)、応永の乱(大内義弘)で淘汰し、数々の守護大名も完全に支配下に置くことになる。その権勢は絶大なもので、摂関家の公家まで扈従として従属させるなど、我が世の春を謳歌したのであった。
またそれに続く四代将軍、足利義持、六代将軍、足利義教についてもページが割かれており、特に義教については、「義満」流をかなりの部分で引き継いでいたという分析である。ただ、時代の趨勢の変化を見誤って、義満同様、強引に守護大名を支配しようとしたことから、嘉吉の変で赤松満祐によって暗殺されることになったという見方を取る。
全編、以前紹介した『応仁の乱』同様、多分に論文調で、他の論文への批判なども随所に見られるが、そういう部分は一般読者にとってあまり必要ない箇所である。他にも、不要と思われる箇所が非常に多く、こちらも『応仁の乱』同様、全体的に冗長に感じる。序盤の観応の擾乱あたりの分析が面白かったため今回買って読んだが、全体的な印象は、買わなくても良かったかなというものである。あくまでも一般向けの記述を目指すべきで、研究のアリバイ作りみたいな本(専門書によく見受けられるが)はたくさんである。それに足利義満が築いた北山第(現在の鹿苑寺〈金閣寺〉周辺)がバーチャルリアリティの空間だったという分析も、正直どうでも良いと感じるような分析で、あまり感じるところはない。