〈意味順〉英作文のすすめ

田地野彰著
岩波ジュニア新書

明解でわかりやすい英文法書

 自分が当たり前のように知っていることを他人に伝えるのは意外に難しいもので、たとえば英文法を生徒に教えるとき、実際に何から教えていいかほとほと困ってしまうことがある。

 この本は、英語を教える側の人にも教わる側の人にも役に立つ本で、英語が「語の順序」を重視する「固定語順言語」であるという前提で話を進めていく。実は英語が固定語順であることは、英語に慣れている人は当然のように理解しているんだが、そのことを実感しているかと言えばノーと言わざるを得ない。僕自身、固定語順であるということを知ったときは「目からウロコ」みたいな感慨を得たものである。この「英語は固定語順言語」という前提の下、英語の文章が一般的に「だれが」+「する」+「なにを」+「どこで」+「いつ」という構造になっていることを示し、それぞれの枠に、適切な単語を入れることで英文を作っていこうじゃないかということを提唱する。

 さらに、それぞれの枠について1章ずつ割いて、詳細に説明していき、その過程で関係代名詞、関係副詞、5文型から仮定法まで、非常に平易に説明していくってんだからなかなかのものである。著者は英語教育の研究者(京都大高等教育研究開発推進センター教授)であるが、この本の解説は、英語の構文解析や教育法の観点から見てよく練りあげられていると感じる。ただ、補語や使役動詞の扱いについては、個人的に少し異論があり、こういう考え方で良いのか疑問に思ったが、教えやすさを念頭に置けばこれも許容範囲と言えないこともない。ただ違和感が残るのは確か。もっとも文法なんてものは解釈次第でどうにでもなるわけで、こんなことを細かく指摘することに意味がないこともまあ分かってはいる。

 ともかく明解さ、分かりやすさという点では、非常に優れた英文法体系であり、そういう点で多くの英語入門者に勧めたくなる本である。

-英文法-
本の紹介『英作文のためのやさしい英文法』
-英語-
本の紹介『語源でふやそう英単語』
-英文法-
本の紹介『はじめての英語史』
-英文法-
本の紹介『ネイティブスピーカーの英文法』