ネイティブスピーカーの英文法
英語の感覚が身につく

大西泰斗、ポール・マクベイ著
研究社出版

ユニークな切り口で
英文法にアプローチする

 高校で教えられる英文法は、例外ばかりがやたら多く、例外がこんなに多い文法体系ということになると、そもそも文法体系として未熟なんじゃないかと思ってしまう。

 しかも、単に文法的な要素を仕分けするだけで終わってしまい、そこに意味を見出すという作業を怠っているように思われる。したがって高校の英文法は非常につまらない単元になってしまう。そういうこともあって、英文法偏重に過ぎた日本の高校英語教育は、ここ数十年で会話やリーディングに重きを置く方向に移ってきた……というような話を聞くわけだが、実際のところ高校の現場では相変わらず馬鹿なことを純な高校生たちに無理矢理憶えさせて、若いエネルギーをいたずらに浪費させている。一方で、あんなにこまごましたことを憶えないといけないのか、そもそもこういった教師たちが本当にそこまで完璧に憶えているのか……などという疑問を持ってしまうのだ。

 さて、この本だが、この本の著者も同じようなことを考えているらしく、こまごまとした英文法の些末な事項を憶えるよりも、ネイティブスピーカーがどのような発想でさまざまな構文を使っているかを探り、彼らの発想に基づいて英文法を注釈していこうという、かなり大胆な試みを行っている。

 僕自身が浪人時代、この本の著者と同じようなアプローチで英文法に対峙していた先生と出会い、その考え方に共鳴してちょっと毛色の変わった方法で英文法を学習したため、この著者の考え方には全面的に賛成できる。実はその恩師が何を根拠に(というか出典として)そのような斬新なアプローチを取っていたか探るべく、いろいろと英語学やら何やらの文献にも当たってみたが今までわからずで、それでとうとうこの本に辿り着いたのだった。

 この本の著者は僕と同世代で、しかも書かれている内容が、僕が以前教わった内容に非常に良く似ているため、もしかして同じ先生に習ったのかと思ったほどなのである。たとえばこの著者の他の著書ではあるが、その中に「変化のinto」や「探すfor」などといった用語が出てくる。こういう用語は僕自身が件の恩師に教わったものであり、他であまり耳にすることがないことから、そういうことを感じたわけ。もしかしたら英語学では普通に出てくる用語なのかも知れないが、いずれにしても、この本が、永らく求めていた類の本であったのは確かである。

 さて、本書で扱っている内容だが、具体的には冠詞(the、aの意味あい)、受動態の意味あい、仮定法などで、僕としては仮定法の考え方以外はそれほど目新しいことはなかったのだが、おそらく学校英文法しか勉強していない一般の方々にとっては目からウロコなんじゃないかと思う。ただ分量が150ページ程度と少なめなんで、多少の物足りなさはあるかも知れない。ではあるが、この本を、こういった合理的な学習法への入門書と考えれば、非常に有用な存在になると思う。この他にも同じ著者の『ネイティブスピーカーの……』という名前が付いた本は、確認できただけでも他に7冊あるようで、少しずつ攻略していけば本物の英語的な発想力が身に付くんじゃないかと思う。学校英文法に飽き飽きした人にオススメ。

-英文法-
本の紹介『ネイティブスピーカーの前置詞』
-英文法-
本の紹介『ネイティブスピーカーの英語感覚』
-英文法-
本の紹介『〈意味順〉英作文のすすめ』
-英文法-
本の紹介『日本人の英語はなぜ間違うのか?』
-英文法-
本の紹介『はじめての英語史』
-英文法-
本の紹介『英語の歴史から考える 英文法の「なぜ」』
-英語-
本の紹介『英語の歴史』
-英文法-
本の紹介『日本人のための英語学習法』