凍りの掌 シベリア抑留記

おざわゆき著
小池書院

絶望や希望の描写が秀逸

 かつて放送されたNHKのドラマ、『お父さんと私の“シベリア抑留”』で紹介されていたマンガで、太平洋戦争敗戦後の日本兵のシベリア抑留を描いた作品である。モデルになっているのは著者の父で、父からの聞き語りを基にしたものである。

 シベリア抑留についてはあちこちで語られているようだが(僕自身は映画『人間の條件 第六部』のイメージが強い)、関心のある人は別にして、一般人のところにはなかなかその情報は届いていない。僕自身も事実としては知ってるつもりであったが、今回このマンガで目にしたシベリア抑留の実態についてはこれまでよく知らなかったわけで、本書で描かれる具体的な描写はかなりの衝撃を伴って迫ってきた。著者も書いているが、すでに経験者が鬼籍に入り少なくなりつつある今、なるべく早く記録として残しておかなければ、結局この歴史自体がないものにされてしまう危険性がある。そういう意味でも、こういった形でマンガ化したのは大変立派な功績である。

 マンガ自体は、かなり省略化された(かわいらしい)絵で、多少の物足りなさは感じるが、しかし全編丁寧に描かれているのは確かで、当時の状況を再現しようという熱意は十分伝わってくるし、実際に十分再現できている。(本書のテーマである)絶望や希望もしっかり表現されており、俘虜記の傑作の1つと言っても良い。

-文学-
本の紹介『俘虜記』
-マンガ-
本の紹介『コミック昭和史 第5巻〜第8巻』
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