タネの未来 僕が15歳でタネの会社を起業したわけ
小林宙著
家の光協会
植物マニアだけに(文章表現が)青い
中学生のときに起業したタネ・マニアの著者(現在高校2年生)によるタネの話あれこれ。
タネは全生物にとってきわめて大切なものであるにもかかわらず、現在の世界には、一部の人間がタネを独占しようとする動きがある。これは大変危険な傾向であると、著者は警鐘を鳴らす。そういう傾向に対する防衛策の一環として、著者、小林宙は、自身でタネを集め、これを全国的に流通させるという活動を始めたのだった。
日本には昔から地域ごとに伝統野菜のタネが継承されていたにもかかわらず、そのタネが消滅しつつあるのが現在の流れであると著者は言う。それを考えれば、そういったタネを残し流通させるという活動は、生物多様性や食料防衛の観点から見ても非常に有意義であることは間違いない。この若さで、趣味からそういった事業に発展させた著者の活動は非常に純粋で、敬意を表したいところである。本書では、そういった活動や理念、これを事業へと発展させたいきさつなどが、高校生らしい軽い言葉で語られる。
平易な言葉であるため読みやすいには読みやすいが、こう言っちゃ何だが、生意気な高校生が書くような文章で、読んでいて何だかあまり良い気分がしない。文体をもう少し周りの編集者やなんかが気にして修正してあげれば、本自体のグレードはぐっと上がったのではないかと思うんだが、ともかく読んでいてイラッとするような記述なのである。もちろんこういう感覚は読む人によって違うはずだが、少なくとも僕は、彼の純粋性や仕事の立派さはわかるが、文章が気に食わない。巻末に家族や妹たちの文章、それから学者の寄稿もあるが、どれ一つイラッとするような要素はないのに、本文だけヘンな感じがする。どこが変なのか具体的に指摘できないが、とにかく嫌なんだ。だからしようがない。もう少し抑え気味に書きなよ、とアドバイスしたくなる……まあそんな感じの文体である。