娘と私の部屋

佐藤愛子著
集英社文庫

実に軽ーいエッセイ

 『九十歳。何がめでたい』が話題になった佐藤愛子が40年前に書いた実に軽ーいエッセイ。僕が高校生くらいのときに読んだもので、当時結構人気が出ていた作品である。元々、雑誌『ノンノ』に連載していたものらしく、その後マンガ化もされ、ドラマ化もされた。ドラマでは確か河内桃子が佐藤愛子役を演じていた。

 このエッセイに出てくる「ママ」(つまり著者)は大変な豪傑おばさんで、気に食わないことがあったら、かなりはっきりしかも大きな声でその旨を述べるらしい。娘の前では特に……らしい。ただ言っていることは概ね正論で、ごもっともであるため、どちらかと言えば読んでいて痛快ではある。ただしこんな人が近くにいたら疲れるのは目に見えている。

 当初雑誌連載だったこともあり、それぞれの文章には当時の世相が反映されているが、なにぶんその対象が今となっては古い。『イレブンPM』のテーマミュージックを娘と歌い合うとか殿さまキングスがどうだとか、今読むと若干の懐かしさもあるが、今の若い人が読んだらよくわからないだろうと思う。こういう楽しい本は気軽に読み継がれてほしいところだが、時代性の濃いものは時代を超えていかないんだろうねェ(と佐藤愛子風の文体になる)。

 僕が今回読んだのは集英社文庫版だが、解説を書いているのが今公恵という人で、この人、なんと佐藤愛子の秘書で、佐藤家に出入りしていた人だという。したがって著者とも「娘」の方とも非常に親しい間柄であり、第三者的に見た佐藤家の風景が紹介されていたりして、非常に新鮮。解説にこういう人選をした集英社に拍手パチパチである。

-文学-
本の紹介『困ったなア』
-文学-
本の紹介『戦いすんで日が暮れて』
-随筆-
本の紹介『九十歳。何がめでたい』
-随筆-
本の紹介『九十八歳。戦いやまず日は暮れず』
-随筆-
本の紹介『かつをぶしの時代なのだ』