「ひきこもり」救出マニュアル〈実践編〉

斉藤環著
ちくま文庫

「ひきこもり救出マニュアル」という
看板に偽りなし

 『「ひきこもり」救出マニュアル〈理論編〉』の続編……というより元々は一冊だったため、正確には後半と言った方が良いかも知れない。前回のレビューでは多少の物足りなさを訴えたわけだが、こちらの方は非常に充実している。こちらもQ&A形式ではあるが、内容がかなり具体的で、こういう場合にはこう対処すべきということがかなり具体的に示されている。ひきこもり当事者の家庭内暴力や破壊行為などに対しても、具体的な対策を示しているため、実際にひきこもり当事者を周囲に持つ人々にとっては福音書になるんではないかと思う。またこうした対策が、一貫性のある理論に基づいていることが読んでいてよくわかるため、内容の信頼性が高いと感じる。しかも生活保護や公的支援などについても非常に具体的に紹介されている。まさに入門書でありひきこもり救出マニュアルである。

 ここに書かれていることは非常に参考になるのは確かだが、実際にひきこもり問題に対処することは相当な難しさがあるとも感じる。ひきこもりというと精神論や育児原因論など、非常に安直な結論をまことしやかに言う「赤の他人」がたくさんいるが、そういう程度のものではないということも納得できる。関係者は覚悟を持って対峙しなければならないということがわかる。しかもこれが今後の日本に重くのしかかる問題であることも注意しておかなければならない。社会構造自体を、こういう人々をあまり出さない社会へと抜本的に変えていかなければならないのではないかと思うが、この国の保守性、社会的利己主義はいつまでも直る兆候が見られない。そもそも先ほど言ったような「赤の他人」が社会的利己主義を体現しているような存在であるわけだ。

 また、これは〈理論編〉とも共通するんだが、編集が少々杜撰である。こちらは言及ページは合っていたが、一部重複箇所があるなど(222ページに5行分、前のページと重複が見られる)、市販の書籍ではあり得ないレベルのエラーがある。また分冊にしてしまったことも(それから〈理論編〉〈実践編〉というタイトルにしてしまったことも)致命的なエラーに近いと思う。この本に限っては(多少分厚くなっても)分冊にしない方が良い。

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