いよいよ受験シーズンになりました。私立高校の入試も始まり、本塾の生徒も志望校の受験に挑んでいます。
 受験については、人によっていろいろ考え方があると思いますが、高校入試と大学入試については、私は成長するための通過儀礼と考えるとそれほど悪いものではないと考えています。入試の経験を経ることで子どもたちは大いに成長するものです。自ら志望校を決定しその関門を突破するために努力するという経験は、うまく行っても行かなくても必ずや生きる上で大きな糧になるでしょう。

 自らの進路を自ら決めるという経験は、ほとんどの中学生がこれまでしていないはずです。将来がかかった決定は生きていく上でたびたびあるものですが、受験はその第一歩と言えるものになります。ところが家庭によっては、親が過度に介入して本人の代わりに志望校を決めてしまうなどということもあるようで、こういう行為は折角の成長の機会を奪ってしまうことになります。助言はともかく、最終決定を親と言えども他者がやってしまうことは本人のためにならないだけではなく、親子関係に禍根を残すことにもなりかねません。大学受験の際にも(その後の人生においても)自分で行った過去の決定の経験が必ず生きてくるはずです。

 ある生徒は、元々県立高校志望でしたが(岡山は一般的に県立高校を第一志望にする家庭が多い)、オープンスクールで実際にいろいろな学校を覗いてみた結果、最終的にある私立高校に決めたと言います。合格はほぼ決まっているため、成績優秀者に与えられる特待の権利を目指して入試を受けるという決定を自ら下したという話を聞いて、私は非常に感心しました。これが自らの決定というものであり、(県立の方が良いという)一般的な価値観に縛られることなく自分の感性を信じて意志決定をしたということにこの生徒の人間としての成長を感じました。もちろんこの決定が正しかったかどうかは数年後にならなければわかりませんが、たとえ後悔することになってもこの生徒はそれを他人のせいにすることはないでしょうし、自ら新しい道を探るのではないかと思います。

 もちろん受験には失敗のリスクもありますが、高校入試の場合は、倍率から考えても合格する可能性の方が圧倒的に高いわけで、自らの実力に応じた選択を誤らなければ失敗する可能性はかなり低いと言えます。そういう意味でも最初の試練としては最適なのではないかと思います。たとえ失敗したとしても、自ら選択していればそれをプラスに変えることを学べるはずです。

 生徒たちには、失敗を恐れず、試練を楽しむぐらいの余裕を持って臨んでほしいものです。生涯において高校受験に臨むのはせいぜい数回です。お祭りだと思って楽しむ位の気持ちでいれば、受験を120%良いものに変えることができるでしょう。

 ちなみに私は、大学受験の際に2年浪人していますが、今となっては人生でもっとも充実していた日々だったと感じています。

エッセイ
23年受験シーズンを振り返る
エッセイ
24年の受験の総括