その問題、経済学で解決できます。

ウリ・ニーズィー、ジョン・A. リスト著、望月衛訳
東洋経済新報社

イライラすることが多い本

 わかりやすい行動経済学の本。行動経済学というのは、経済原則が必ずしも合理的に働くのではなく、人間の動物的な要素が絡んでくることを研究する学問である。たとえば、値段の高いもの、低いもの、その間のもののうち一つ選んで購入するような状況の場合、人は(内容がどういうものであっても)真ん中のものを選びやすいとか、無料のおまけが付くとたとえ結果的に損であっても人はそちらの方を選びやすいとか、そういった行動原理を探求していく、比較的新しい分野の学問である。

 この本でも同様に、著者のウリ・ニーズィーとジョン・A. リストが、さまざまなコミュニティや企業と協力して、実際に人が選びやすい選択肢を究明する研究を行い、それを紹介している。たとえば、寄付金が一番集まりやすいのはどういう設定にした場合か(たとえば宝くじ風のものを付ける、寄付があれば同額の寄付が別の出所から発生する)とか、ワインの値段をどう設定したら一番売れるかとか、あるいは学生の成績を上げる上でインセンティブを付ける場合どういう方法がもっとも効果的かとか、そういった類の実験をやっている。その上で、企業やNPOなどが何らかの決断をする場合は、一部の対象者に対してこのような対照実験を行うことで、どの方法を採用するか決定すべきであるということを説いている。

 内容は、実例が多いこともあって非常にわかりやすいが、ただ全体的にかなり冗長で、読んでいるうちにイライラしてくる。もう少し簡潔にまとめて、他の実例などを追加した方が内容が充実したんじゃないかと思う。僕なんかは半分くらい読んだところで完全に飽きてしまった。興味深い箇所もあるにはあるんで、そういう冗長さが結果的にマイナスに作用している気がする。また、翻訳の文章が終始タメ口調で、最初の方はそれに面白味も感じたが、あまりにしつこく続くんでかえってイラッとしてくる。終いには腹が立ってきた。誤植もあちこちに見られるし、「坊主憎けりゃ」でこういうのも腹が立つ材料になってくる。

 行動経済学についてあまり知らない人たちにとっては目新しさもあるかも知れないが、それでもやはり、相当イライラする本であることは変わりない。

-心理学-
本の紹介『予想どおりに不合理』
-心理学-
本の紹介『不合理だからうまくいく』
-マンガ-
本の紹介『行動経済学まんが ヘンテコノミクス』
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