行動経済学まんが ヘンテコノミクス
佐藤雅彦、菅俊一、高橋秀明著
マガジンハウス
行動経済学の事例集、だが玉石混交
行動経済学の事例をマンガにしてわかりやすく読者に提示しようという試みの本。著者は、『ピタゴラスイッチ』でお馴染みの佐藤雅彦、およびその弟子の菅俊一。作画は、「バザールでござーる」の広告に関わった高橋秀明が担当。絵自体は50年以上前のギャグ・マンガを思わせるようなクラシカルなもの。
内容はアンカリングとかハロー効果とか、あるいは認知的不協和の解消まで入っていて盛りだくさん。これを23話の短編マンガにまとめている。
『サザエさん』的なほのぼの世界を使った事例集であるため、読みやすくわかりやすいが、第21話の「無料の威力」の話とか第23話の「双曲割引」の話など、事例があまり適切でないものもちらほらある。こういった「失敗例」については、事例が適切でないばかりか面白味もない。そのため、行動経済学に興味を引こうという目的に叶っておらず、むしろマイナスになっているような気さえする。意図や目的は素晴らしいし十分評価に値するんだが、必ずしもその意図が実現されているとは限らない点が残念である。ただ第1話の「アンダーマイニング効果」や第2話の「感応度逓減性」など非常によくできた箇所もある。どうやら後になるほど質が落ちているようで、もしかしたらネタ切れだったのかも知れない。
あまりインパクトはないし、内容的にも全面的に賛成ではないが、行動経済学への入口としては良いかも知れない。ただ先ほども言ったように行動経済学の魅力を低減させるような内容も含まれているため注意が必要ではある。