マイファーム 荒地からの挑戦
西辻一真著
学芸出版社
荒れ地状態の日本農業
その再生への一歩
耕作放棄地を一般の人々に体験農園として開放し、放棄地の再生と消費者の農業への参加を推し進めている企業がある。それがマイファームで、本書の著者はそのマイファームの若手社長。
子どもの頃から土に親しみ、学生の頃は農業の衰退に胸を痛めていたという西辻氏、農業に関わる企業を起こすことを夢見、そのために就職活動すらそれを前提として行ったという。情熱とバイタリティはすごいが、本書から窺われる彼の人格は、真面目、正直、温厚、素直といったもの。どこにそれだけのエネルギーがあるのかわからないが、やはり思い入れの要素というのは、人が何かやる上で大きいんだなと思う。
本書では、この人のこれまでの来し方を紹介しているが、こういう仕事をやるべくしてやっているという印象で、言ってみればそういう部分が才能ということになるんだろう。正直言って、こういう事業で企業がやっていけるのか疑問に感じる部分もあるが、実際売上が1億円を超えていると言うんだから事業としてはうまく行っているんだろう。現在、有機農業を教えるための教育事業(アカデミー)まで業務を拡大しつつあるという。このアカデミーの卒業生が有機農業で生計を立てていけるように、農園で講師として採用し副収入を確保できるようにするという目論見もあるらしい。このアカデミー事業も当初からのビジョンに入っている事業で、当初からの計画どおり事業の裾野が少しずつ広がっているのがよくわかる。
また、塩害用の改良剤の開発も行っていて、東日本大震災で農業ができなくなった東北の塩害の畑にこれを使って、一定の効果を上げている。農業を収益の挙げられる事業にして日本の農業を再生させようという気概が心地良く、そのために、できることから着々と仕事を進めるという方法論も実践的で良い。自分も頑張らなきゃいけないなと考えさせられた本だった。