以前「本が大切」と主張したのですが、それはそれとして、今の日本で発売されている本の質が、全体的に非常に下がっているという事実は、事実として存在しています。
とにかく私に言わせると、新刊本の90%以上は「綴じた紙」以上の価値がない、要するに「ゴミ」だということになります。とにかく質の低いものがあまりに多い。出版社側が、売れさえすれば良いと思って作っているせいかどうかはわかりませんが、もう少し何とかならないのかと思います。こういう商売をしていると、そのうち消費者からそっぽを向かれるよと出版関係者に言ってやりたいくらいです。
原因として考えられるのは、第一に出版点数が異常に増えたことが挙げられるでしょう。1990年代に雑誌も書籍も過去最高の出版点数を記録し、言ってみれば出版界もバブルを経験したわけですが、それ以降も出版界が劇的に縮小するということが起こっていません。一方で、インターネットが普及して、雑誌や本が売れにくくなるという現象が進みました。今までは本や雑誌でしか得られなかった情報が、ネットを介して無料で比較的簡単に得られるようになれば、本の売れゆきが落ちるのは当然です。大手出版社は、何とかして売れる本を出し売上を維持しなければならないということで、「下手な鉄砲も数打ちゃ当たる」式に拙い企画がどしどし通される。こうしてますます妙な本ばかりが増える。こういったことが一つの理由ではないかと考えていますが、もちろん本当のところはわかりません。
もう一つ私が感じているのが、大手出版社の人材不足という点です。80年代から90年代にかけてマスコミや大手出版社が、大学卒業予定者の人気業種になってちやほやされるようになりました。結果的にこういった企業の入社試験が難しくなりましたが、一般的に試験が難しくなると、入ってくる人材は均一化してしまいます。早い話が面白味の少ない人が増える……ような気が私にはしているんですが、こちらも正直なところ、にわかに断定することはできません。
そんなことはともかく、こういう状況ですから、消費者の側も自己防衛が必要になります。私個人については、過去、広告に惹かれて買ったものの、あまりに内容が乏しいために、すぐに「古紙」化してしまうことがたびたび重なったため、簡単に本を買わなくなりました。いったん図書館で借りて読んでみて、面白ければ買うというのが習慣になり、おかげで無駄遣いは減りました。要は、モノ同様、慎重に選ぶ必要があるということです。
私たちがすべきことは、良いものと悪いものをしっかり判別した上で、良いものだけを買うようにするということで、そうすることが出版業を育てることにも繋がります。出せば何でも売れる時代は終わっているということを業界の人々に知らせるためにも、正しい消費行動を心がけましょう……という、結局、その他のモノと同じ結果が導き出されるわけですね。