大学入試担当教員のぶっちゃけ話

櫻田大造著
中公新書ラクレ

しっかりぶっちゃけてほしかった
「優」をあげたくならない本

 大学入試の現場について大学教員の視点で論じる本。

 日本の大学入試は、基本的に各大学の大学教員が入試問題を作り、大学職員と教員が協力して入学試験を実施している(らしい)が、これが世界に類を見ない特殊な形態(「ガラパゴス化」と著者は呼んでいる)で、しかも教員に大変な負担を強いているというのが著者の主張。そのために、少なくとも教員の負担を減らすとか、入試関連の労働に見合った待遇改善をすべきだと言う。

 お説ごもっともではあるが、どうも奥歯に物が挟まった言いようが多いような感じがするのは、著者が勤める関西学院大学の事情があまり語られていないためで、そのために一般論で終始してしまっているような印象がある。端的に言えば内情についてあまり「ぶっちゃけて」はいないのだ。いろいろあちこちで読んだり聞いたりした話を寄せ集めましたという内容で、その辺が非常に物足りない。

 それでも、入試問題作成、入学試験、合格発表、その後の手続きに大変な労力がかかっていることはよくわかったし、あちこちの大学事情、入試事情もある程度知ることができたので、この本を読むことにそれなりのメリットはあると言える。ただ先ほども言ったような理由で満足度は低い。それから「ツージョー」みたいな言葉づかいが頻繁に出てくるのもうっとうしい。また「一兎を追う者、二兎を得ず」というようなフレーズが出てきたりもするが、どういう意図で使っているのかまったくわからない(言うまでもなく「二兎を追う者は一兎をも得ず」をもじっているんだろうが)。ところどころにこういう独特(?)の表現があって、結構戸惑う。この著者には『「優」をあげたくなる答案・レポートの作成術』という著書もあるらしいが、この本については「優」は無理なような気がする。

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